ニュース速報

ビジネス

乱高下後も日本株に先高観、短期のスピード調整には警戒

2017年11月09日(木)19時37分

 11月9日、日経平均株価は乱高下したが、市場では強気な見方も根強い。乱高下の原因はオプションSQ(特別清算指数)算出前のポジション調整とされ、良好なファンダメンタルズを支えに、中期的な上昇基調が続くとみられている。写真は都内の株価ボード、4月撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 9日 ロイター] - 9日の日経平均株価<.N225>は乱高下したが、市場では強気な見方も根強い。乱高下の原因はオプションSQ(特別清算指数)算出前のポジション調整とされ、良好なファンダメンタルズを支えに、中期的な上昇基調が続くとみられている。

ただ、バブル崩壊後高値という歴史的な節目を一気に超えてきただけに、短期的なスピード調整を警戒する声もある。

市場関係者の見方は以下の通り。

●踏み上げ相場は目先一服か、中期的な株高基調継続へ

<三菱UFJ国際投信 チーフストラテジスト 石金淳氏>

日経平均で2万円から2万1000円の価格帯は、90年代後半以降のレンジの上限だった。ヘッジ目的の売り玉が積み上がっていたゾーンだが、今回の株高で一斉に踏まれた格好となった。日米間の比較では日本株は割安に放置されていたが、海外景気自体は今年後半以降、拡大が鮮明となっている。日経平均に採用される値がさ株には、海外景気の恩恵を受ける銘柄も多い。共産党大会後の中国経済については、構造改革のまい進による成長率鈍化の懸念があったが、それも空振りに終わっている。

節目を上に抜けた時のアップサイドリスクは軽視できない。先月の上昇局面では「かんな」で削るように日本株のポジションを落としていったが、10月下旬以降にそれは止めた。ただ、短期的には明らかに過熱感がある。これからポジションを積み上げるということもやりにくい。場合によっては2万2000円を割る展開もあり得るが、そこまで下がったとしても、株価の居所自体が変わっている。中期的には弱気になる必要はない。

日経平均でいえば、ここから上は2万6000円─2万7000円あたりまで節目らしい節目がない。すぐにではないが、さらに4000円程度上昇するポテンシャルはある。リスクを上げるとすれば為替だ。日本の経常収支の黒字が膨らんでおり、円安には限界がある。

一方で、米国の経済指標が低調となり、米金利の先高観が後退した場合は円高に振れるリスクがある。この場合、日本株にも調整が入る可能性もあるが、せいぜい円高が進んだとしても1ドル111円ぐらいだろう。日経平均はいったん調整した後、2万2000円─2万3000円でのもみ合いの局面に入るのではないか。もちろん北朝鮮情勢については注視が必要だ。

日経平均の年内予想レンジ:2万2000円─2万4000円

●バリュエーション面で上限に接近、スピード調整も

<りそな銀行 チーフストラテジスト 下出衛氏>

日経平均はバリュエーション面から判断して2万3000円程度が上限であり、現状はスピード調整が必要な水準だろう。今のところ世界景気と緩和的な金融政策のバランスは取れている。世界的な景気回復がすぐに腰折れする懸念はない。力強さはないものの、地域的にもセクター的にも広がりがある。主要国の金融政策もマーケットフレンドリーにみえる。

しかし、レトリックとしてはフレンドリーだが、実際に米欧は着実に変化している。12月の日銀決定会合でも何らかの転換シグナルが出ないとも限らない。今後の各国の金融政策には注視すべきだろう。株価は上振れることもあるが、景気実体を伴わない株高は禍根を残す。

日経平均の年内予想レンジ:2万0000円─2万4000円

●割安水準を修正、一段高には業績伸び必要

<フィデリティ投信 インベストメントディレクター 福田理弘氏>

日本株の水準が切り上がって、需給面から買い遅れて焦っている投資家がいるようだ。押し目買いが支えとなって相場は下がりにくい一方、上昇する場面ではオーバーシュートしやすくなっている。

このところの日本株の上昇は、企業の堅調な業績を確認する中で、割安水準から適正水準に修正するプロセスだった。第1・四半期終了時点の会社側の通期経常利益予想は約7%増だったが、中間決算を経て約12%増に引き上がってきた。

一方、夏場にはPER(株価収益率)が14倍付近だったが、上昇相場を経て15倍台に上昇してきた。過去15年間の日経平均のPER(株価収益率)の平均は15倍程度で、これを適正水準の目安とみれば、これまでの日経平均の上昇は、割安水準から適正水準に修正されたに過ぎないといえる。

相場押し上げの原動力は、今年度下期から来年度にかけての企業業績の良さに確信度が増したことだ。夏場まで懸念されていたのは、中国経済の共産党大会後の先行き不透明感だったが、党大会を経ても経済状況に大きな変化がないことが、日本企業の決算を通じて再確認された。

過去2カ月の相場は水準の修正だったが、ここから一段高となるには、あらためて業績の伸びを確認する必要がある。日銀の黒田東彦総裁の後任人事や、第3・四半期決算がポイントになる。外部環境としては、米株価の動向や税制改革、利上げの先行きなども重要だ。

日経平均の年内予想レンジ:2万1000円─2万4000円

●節目越え上昇弾み、視線は個別株に

<SMBCフレンド証券 チーフストラテジスト 松野利彦氏>

心理的節目の2万3000円を超えたことで、押し目を待っていた人が買わざるを得なくなり、上昇に弾みがついたようだ。ただ、いくら米株高・円安基調とはいえ、外部環境を見る限り、節目を上抜けてここで一段高となる理由は見当たらない。

テクニカル的にも過熱感が目立っている。25日移動平均線からのかい利率は6%を超え、騰落レシオも日経平均でみると170%を超えている。アベノミクス以降5回目の現象で、170を超えると相場がピークアウトするケースが多い。日経平均は「バブル崩壊後」高値や、ドルベースでの200ドルという節目を上抜けており、達成感が出てもおかしくない。企業の中間決算がピークを超えて業績の全容がわかってくると、材料出尽くしから、ひと休みの材料にされやすい。

とはいえ、バリュエーションの面からは、日経平均のPER(株価収益率)15倍台はまだフェアバリューの範囲内といえる。相場の調整があるとしても、水準ではなく日柄の調整となるだろう。米国株が高い限り、日本株を積極的に売る材料もない。

日経平均の動きは鈍くなるが、TOPIXが上昇するといった局面になってくるのではないか。足元では、日経平均採用銘柄から、そうでない銘柄に投資家の目が向かってきた。10月以降の上昇局面では、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回る日が散見され、先物の買いに現物が追随できていなかった。それが足元では、値上がり銘柄数が過半数を越える日もあり、現物の買いが主導する相場に移行してきたようにも見える。

日経平均の年内予想レンジ:2万2000円─2万4000円

(ロイターニュース 株式マーケットチーム)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、エレサレム銃撃犯出身地で住宅解体命令 

ワールド

ネパール首相が辞任、反汚職デモ隊と警察の衝突続く

ビジネス

アングル:石破首相退陣、経済運営に不確実性 重要度

ワールド

韓国、チャーター機派遣へ 米移民当局の一斉摘発
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 3
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒否した母親、医師の予想を超えた出産を語る
  • 4
    石破首相が退陣表明、後継の「ダークホース」は超意…
  • 5
    ドイツAfD候補者6人が急死...州選挙直前の相次ぐ死に…
  • 6
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 7
    もはやアメリカは「内戦」状態...トランプ政権とデモ…
  • 8
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 9
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 10
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 10
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中