ニュース速報

ビジネス

三菱重、MRJ納入20年半ばに延期 安全性重視で設計変更

2017年01月23日(月)20時12分

 1月23日、三菱重工業は、子会社が開発を進めている国産ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」について、2018年半ばを予定していた航空会社への量産初号機の引き渡し時期を20年半ばに延期すると発表した。見本市で訪問客がポスターの写真を撮る様子。都内で昨年10月撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

[東京 23日 ロイター] - 三菱重工業<7011.T>は23日、子会社が開発中の国産ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」について、2018年半ばを予定していた航空会社への量産初号機の納入を20年半ばに延期すると発表した。

最新の安全規準に適合させるため、一部装備品などの配置や電気配線の設計を変更する。納入延期は5度目で、膨らむ開発費や販売への影響が懸念される。

会見した宮永俊一社長は「今後のMRJの長い事業展開のために、より良い結果をもたらすだろうという判断で設計変更を決断した」と説明。巨額損失を出した客船事業と同様、開発前の情報収集やリスク分析を「もう少し勉強すべきだった」などと反省も口にした。

同社は昨年11月からMRJを社長直轄事業と位置付け、経験豊富な外国人技術者の活用も増やし世界基準での安全性を追求してきた。今回の設計変更も外国人技術者による助言という。できる限り納入時期の前倒しも目指す。

MRJの事業化を決めた08年当時は13年に初号機納入を予定、開発費は1500億―1800億円を想定していた。その後、延期が相次ぎ、昨年で3000億円超に膨らんでいる。宮永社長は実額については明言を避けたが、開発費は計画に対し「3―4割」増えるとの見通しを示した。

ただ、延期による今後のキャッシュ投入はグループ全体で生み出すフリーキャッシュフローで対応可能として「全く問題ない」と指摘。また、投資回収期間の長期化は見込まれるが、開発費の増加がグループ全体の単年度損益に与える影響は「軽微」とした。

これまでの正式な受注契約数は計427機(オプション・購入権としての契約含む)。「20年半ば」への納入延期の報道があった20日以降、キャンセルや契約見直しを求める顧客の声はまだないが、宮永社長は「今後のことについて(顧客と)十分に相談しながら、できる限り現在の契約を維持したい」と述べた。

MRJは子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)が開発を手掛け、量産初号機はANAホールディングス<9202.T>へ引き渡される予定。ANAは延期について「非常に残念だが、安全を第一に万全な準備の上、完成度の高い機体の納入を願っている。経済性、環境の適合性、利用者の快適性で高い性能を持つMRJに、少しでも早い時期の納入を求めると同時に、引き続き開発をサポートしていきたい」とコメントした。

*内容を追加します。

(白木真紀)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中