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「円高阻止メニュー」に期待高まらず、介入や緩和の副作用に警戒

2016年04月11日(月)17時18分

 4月11日、週明けの東京市場で円高・株安が、再びじわりと進んでいる。特段のリスクオフ材料が出たわけではないが、「海外勢による円買いや日本株売りが止まらない」(大手証券トレーダー)という。写真は都内で昨年12月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 11日 ロイター] - 週明けの東京市場で円高・株安が、再びじわりと進んでいる。特段のリスクオフ材料が出たわけではないが、「海外勢による円買いや日本株売りが止まらない」(大手証券トレーダー)という。為替介入や金融緩和など「円高阻止メニュー」の効果には、副作用もあるとされ、市場の期待感は高まっていない。

<マイナス金利、イタリア株を押し下げ>

年初からの主要株価指数が、日本より下げている国がある。同じG7国であるイタリアだ。

同国の主要株価FTSE・MIB指数<.FTMIB>の前週末8日までの下落率は18.27%。上海総合指数<.SSEC>の15.6%や日経平均<.N225>の16.8%を上回りG20でみてもワーストパフォーマンスとなっている。

下げの中心は銀行株。イタリアの銀行が抱える不良債権は、約3600億ユーロと同国の国内総生産(GDP)の5分の1に相当する水準となっている。ぜい弱な財務体質のイタリア民間銀行に対し、マイナス金利拡大による悪影響が懸念されているのが、株安の背景だ。

前週7日は、ドラギ総裁を含む3人の欧州中央銀行(ECB)幹部が追加金融緩和への意欲を示したことで、市場心理が悪化。「イタリアの銀行株を中心に欧州株全体へリスクオフの株安が広がった」(野村証券・投資情報部エクイティ・マーケット・ストラテジストの村山誠氏)という。

マイナス金利政策の経済効果は、国際決済銀行(BIS)が懸念を示す一方、国際通貨基金(IMF)が支持するなど見方が定まっていない。長期的にプラス効果をもたらす可能性もある。しかし、少なくとも、現時点の金融市場においては厳しい反応だ。

日本の民間銀行の不良債権比率は、大手行で1.1%、地域銀行で2.4%(ともに2014年度、日銀金融システムレポート)と低い。財務体質はイタリアの銀行よりも強固だが、日銀が1月末にマイナス金利を導入した後、日本の銀行株は収益悪化の懸念から大きく下落した。

4月27─28日の日銀決定会合で、マイナス金利幅を拡大させたとしても、銀行株が下落すれば、この2カ月間の東京市場でみられたように、リスクオフからの日本株売り・円買いが進む可能性がある。

<日銀外債購入は「裏口介入」との批判も>

マイナス金利拡大以外の金融緩和策に対しても、市場における円高阻止の期待は高まっていない。

国債購入額の増額は、マネタリーベースの拡大を通じて、これまでのアベノミクス相場では円安材料として受け止められてきた。しかし、日銀が購入できる国債に需給的な余地は、もはや乏しいとして「限界論」が台頭すれば逆効果だ。

ETF(上場投資信託)の購入額を増やせば、株高効果は期待できる。リスクオンの円売り、もしくは日本株買いの為替ヘッジによる円売りが円高を阻止するかもしれない。

しかし、それも「官製相場」との批判を浴びかねない。人為的に株価を押し上げても、企業業績が追随しなければ、いずれ歪みは修正され、円売りも巻き戻される。

日銀による外債購入はどうか。「為替政策を所管する財務省が、為替介入に類似するとして反対する公算が大きい。さらに、国際的にも、為替の『裏口介入』ではないかと批判も出やすい」とみずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏はみる。

外債に連動したETFなどを購入することも可能だ。しかし、東証に上場している外債ETFはまだ6本。アナウンスメント効果を除くと効果は薄い。

<膨らむ円買いポジション、短期的には介入効果も>

日本の政府幹部は、円高に対して警戒感を強めている。 菅義偉官房長官は9日、ロイターとのインタビューに対し、外国為替市場で一時1ドル107円台の円高水準を付けたことに関し、偏った動きには「日本として対策をやる用意がある」と述べた。

円安方向への反転エネルギーは溜まっている。IMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(4月5日までの1週間)によると、円の買い越しは6万0073枚。6万枚は、アベノミクス相場はもちろん、09年以降の円高局面を含めても最大規模の水準だ。

市場では「円ロングが溜まった局面で、介入すれば、それなりの効果は期待できる。G20でスムージング介入まで排除されているわけではない」(国内証券)との見方は多い。UBS証券・ウェルス・マネジメント部・最高投資責任者の中窪文男氏は「ドル/円は日本の単独介入であっても1回目は、3、4円程度吹き上がる可能性がある」とみる。

しかし、スムージング介入にしても、日本当局は、1週間内に4円上昇した前週の円高局面でさえ円売り介入を実施しなかった。緩やかに円高が進む局面では、介入の大義名分は立てにくい。

今週14─15日にはワシントンでG20財務相・中銀総裁会議が開かれるが、為替介入に踏み切れば、波風が立つ。G20間のきしみは、リスク回避の円高材料にされやすい。

あとは、米利上げ期待という「春一番」が吹くのを期待するくらいしかない。円高の裏側でドル安が進む中、米経済の基調を今週から始まる米企業決算発表で見極めることになりそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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