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焦点:政府・日銀の期待裏切る設備投資、中国減速で計画下振れも
10月8日、企業の設備投資が、高めの計画とは対照的に実績値が伸び悩む現象に直面している。都内で5月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 8日 ロイター] - 企業の設備投資が、高めの計画とは対照的に実績値が伸び悩む現象に直面している。足元で起きている中国経済を「震源地」とした世界経済の減速が想定より大きく、設備投資にちゅうちょする企業の姿が浮かび上がったかたちだ。
このまま設備投資が計画より下振れすれば、日本経済はエンジン出力の低下に直面し、政府・日銀の好循環シナリオ実現に赤信号が点灯しかねない。
<強めの計画裏切る実績値>
8日に発表された8月機械受注の下振れは「日銀短観で示された底堅い設備投資計画(ソフトデータ)をサポートしなかった」とバークレイズ証券・チーフエコノミスト・森田恭平氏は指摘する。
実績を表す「ハードデータ」である機械受注によると、8月の国内民需からの受注が3カ月連続で減少、外需も26%超の大幅減少となった。
機械メーカーからの聞き取りをもとに内閣府が試算している7─9月期の受注額見通しは、もともと前期比0.3%増とほぼ横ばいを想定していたが、これを実現するには9月に40%超の増加という非現実的なジャンプが必要になる。これまで1年間回復基調をたどってきた機械受注は、9月に反発したとしても減少に転じる可能性が高まった。
機械受注とともに設備投資を占う上で重要な資本財出荷指数も、8月は低下している。資本財の在庫率は6月末ですでに前年より3割以上高く、在庫積み上がりが鮮明になっている。7─9月期資本財の生産は減少しそうだ。
設備投資を判断する際に重要な材料となる建設分野でも、建設総合統計が4月以降伸び率が急速に縮小、7月はわずか0.5%増にとどまっている。
今年度の設備投資計画は、各種調査からは例年以上に強めと認識されてきた。9月日銀短観では大企業の同計画が、前年度比10.9%増と上方修正され、過去数年間と比べても高い伸びとなった。
財務省・内閣府が9月に発表した法人企業景気予測調査でも、全産業ベースの2015年度の設備投資計画は前年度比6.1%増となり、前回調査から上方修正された。民間調査機関でも今年後半の設備投資回復を予想する声は多かった。
しかし、中国経済や世界経済への不安から、足元の企業の投資マインドは急速に慎重化し、投資延期や見直しに影響してきたようだ。
<設備投資停滞なら、好循環実現せず>
設備投資の動向は、政府、日銀ともに日本経済の好循環を実現させるための最大の要因とみている。これまでの円安進行による輸出金額の増加や、インバウンド消費の恩恵になどで、製造・非製造業ともに企業収益は過去最高を更新している。
それをいかに賃金や設備投資に回し、消費活性化と産業競争力向上につながげるかが、持続的成長のカギになると判断している。
政府部内では、今年前半の設備投資がキャッシュフローを大きく下回っている業種がが目立つとして、10月から「官民対話」の場を設け、企業経営者に設備投資の実施を迫る方針。
だが、足元では海外経済が急速に減速し、好循環は思うにまかせない状況に陥いりつつある。
政府関係者の1人は「中国経済減速やその世界経済への影響による実需の落ち込みは、侮れないとみている。リーマンショック以上かもしれない」と懸念する。
実際に8月機械受注額の水準は、リーマンショック後の09年以来となる3カ月連続減少となった。
みずほ証券は「中国を震源とする世界経済の減速リスクは、予想を上回る可能性がある」と分析。ニッセイ基礎研究所・経済調査室長の斉藤太郎氏は「中国経済減速の影響はこれから出てくるため、下期の設備投資は回復しないケースも想定される」と予想する。
8日の会見で、日銀の黒田東彦総裁は、9月短観での設備投資計画が強かったこともあり、強気の景気認識を示した。
だが、 BNPパリバ証券・シニアエコノミストの白石洋氏は「設備投資の回復が崩れれば、所得と支出の好循環は続いているという主張が崩れることになる。日銀の景気・物価シナリオは根本的な見直しを迫られる」と予想している。
(中川泉 編集:田巻一彦)





