ニュース速報

ビジネス

海外経済にさらに縛られるFRB、雇用失速で年内利上げ不透明に

2015年10月03日(土)07時24分

10月2日、9月の米雇用統計が予想外に弱い内容となったことを受け、米連邦準備理事会(FRB)は約10年ぶりの利上げに踏み切る上で、海外経済の成長力に一段と左右される不快な状況に陥った可能性があることが明らかになった。写真は9月1日、ワシントンのFRB(2015年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ワシントン 2日 ロイター] - 9月の米雇用統計が予想外に弱い内容となったことを受け、米連邦準備理事会(FRB)は約10年ぶりの利上げに踏み切る上で、海外経済の成長力に一段と左右される不快な状況に陥ったようだ。1年に及ぶ輸出低迷が製造業の雇用を奪い、雇用の伸びに急ブレーキがかかった。

FRBは、米成長率が引き続き、長期の潜在トレンドとされる2.0%程度をやや上回ることを望んでいる。この水準を維持できれば、昨今の金融危機から今後も継続的に回復し、できる限り雇用を拡大することができるためだ。

だがこれまで重要な回復のけん引役の1つだった輸出がドル高で打撃を受けており、輸出による景気押し上げは期待できない状況となった。FRB当局者はドル高や原油安の影響が和らぐのをもう1年も待っているが、現時点で収まる兆しはない。

バークレイズは雇用統計の分析リポートで「海外経済活動の減速に加え、最近の米金融市場のボラティリティーの高まりを反映している」とし、「世界経済の成長に出現した深い穴と不透明感は、数カ月では消えない」と指摘した。

RBCキャピタルマーケッツの首席米国エコノミスト、トム・ポーセリ氏は、単月の指標が金融政策の方向性を決定づけることはないとしながらも、「軟調な世界動向に今回こうしたさえない指標が加わったことで、12月の米利上げ確率は低下した」と語った。

市場関係者の間では、10月利上げの可能性は消え、2016年まで後ずれするとの見方が強まっている。

ミネアポリス地区連銀のコチャラコタ総裁は雇用統計を受け、インフレ加速の明確が兆しが確認できるまで利上げを先送りすべきとの自身の主張を裏付けると述べた。

一方、サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は、月10万人増のペースで雇用が伸びている限り、少なくとも雇用市場への新規参入者や人口の伸びに追いつけるとし、軟調な統計を重視しない立場を示した。

9月の雇用統計では、明るい材料も見られた。50万人近いパートタイム就業者がフルタイム就業者に転じた。パートタイム就業者の動向はFRBも注目しており、大きな改善といえる。企業がパートタイム就業者の雇用条件を改善しているため、新規雇用が伸び悩んでいる可能性もある。

また雇用の伸びの鈍化は、米経済が完全雇用に近付いていることを示唆しているかもしれない。

コーナーストーン・マクロのエコノミスト、ロベルト・ベルリ氏は「現時点は答えを知る術はないため、FRBは待つだろう」と話す。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中