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アングル:トヨタ種類株に10倍超の需要、個人マネーが殺到

2015年07月01日(水)00時15分

 6月30日、トヨタ自動車が発行予定の種類株式に対し、個人投資家の人気が「沸騰状態」となっている。写真は同社のロゴマーク。カリフォルニア州で昨年11月撮影(2015年 ロイター/Lucy Nicholson)

[東京 30日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>が発行予定の種類株式に対し、個人投資家の人気が「沸騰状態」となっている。

販売を担当する野村証券には予定の発行金額の10倍超の申し込みがあり、新規口座の開設ペースは通常の8割増に拡大。すべての購入希望者に種類株が行き渡るか不透明な状況で、高リターンを求める国内の個人投資家の強い投資意欲を浮き彫りにしている。

<利回りは定期預金の10倍>

トヨタが発行する予定の「第1回AA型種類株式」は、上限5000万株(約5000億円)で、発行価額は7月2日から7日のいずれかの日のトヨタの普通株終値に26─30%を上乗せした水準で決まる。

もともと、種類株の発行によってトヨタが中長期的な同社株主層を開拓する狙いがあることも踏まえ、野村は営業店で1人当たりに販売できる株数の上限を5万株に制限している。現在、購入を希望する投資家から、どの程度買いたいか希望を聞き、種類株の発行価額が決まった後に希望者の間に割り振ることにしている。ただ、あまりに引き合いが強いため、希望者すべてが買えない可能性もあるという。

人気の原動力は、その配当率の高さだ。初年度の年率ベースの配当は0.5%で、1年ごとに0.5%ずつ切り上がる。種類株は非上場で5年間の譲渡制限があるが、利率は、たとえば個人向け国債(5年固定金利型で0.05%)や銀行の5年の定期預金金利(メガバンクで約0.03─0.05%)の10倍だ。

投資家は、5年後に利率が年2.5%になったトヨタの種類株を普通株に転換するか、債券として保有し続けるか選択できる。

<預金からシフト>

この高配当率を背景に、個人金融資産の一部は預金から動き始めたようだ。都内のある支店の営業担当者は「使う予定のないおカネが定期預金にあるからと言って定期を解約し、すでに申込みと入金をしてくれた人も複数いた」と話す。

今回の販売会社が野村のみで他の金融機関では買えないこともあり、野村は支店だけでなくバックオフィスもフル稼働。ある支店の営業担当者は「(野村証券全体で発行予定額の)10倍を超える購入希望者が集まっている」と話す。

新規口座の開設ペースも急ピッチで、通常、野村では1日あたり1400程度の新規開設があるところ、種類株の販売が決まってからは「およそ8割増のイメージで開設されている」(関係筋)。新規口座の事務処理を担当する陣容も大幅に増やした。

取り扱い金額(約5000億円)は、野村が扱う単発の新規募集商品としては過去最大の規模となる。

もっとも、今回の種類株は国内の投資家が販売対象。海外投資家には募集がなく市場に流通しないことなどから不公平さが残るほか、潤沢な資金を持つトヨタがなぜ種類株で調達するか理解できない、との異論も根強い。

今後、種類株の発行の狙いや同社の戦略との整合性、意義などを発信するタスクがトヨタに課せられているのは間違いなさそうだ。

(江本恵美 編集:田巻一彦)

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