コラム

日本の魅力が詰まった阿波踊りを世界に

2012年12月06日(木)12時37分

今週のコラムニスト:レジス・アルノー

〔11月28日号掲載〕

 ヨーロッパから見て、日本は退屈で単調な国だというイメージはいまだに根強い。しかしそれを一掃する方法をついに見つけた──阿波踊りだ。

 私と阿波踊りとの出会いは偶然だった。10年前に電車で東京の高円寺駅を通ったときのこと。私は信じ難いほど素晴らしいものを発見し、感動に打ち震えた。

 阿波踊りは人気がある上に、とても洗練されている。高円寺の祭りは毎年1万人、発祥の地である徳島では10万人が参加する。多くの人が本番に向けて、毎日のように笛や太鼓、三味線、そしてもちろん踊りの練習に励む。

 阿波踊りは日本のアイデンティティーを何よりも明快に物語る。スカイツリーはドバイやサンフランシスコに立っていてもおかしくないが、阿波踊りは日本にしかない。リオのカーニバルに次ぐ世界屈指の「ミュージカルショー」なのに、海外でほとんど知られていないことが不思議なくらいだ。

 そこで私は、阿波踊りをパリに輸出するプロジェクトをスタートさせた。500~1000人の踊り手を日本からフランスに送り込もうという壮大な計画だ。飛行機を少なくとも2便チャーターして、ホテルも1000室ほど予約しなければならないだろう。

 決行の日は2014年6月21日。毎年恒例のパリ音楽祭で、阿波踊りがメインイベントになる。

 有益なプロジェクトだから、スポンサーは必ず見つかる。日本の最高の魅力を伝える祭り文化を、もっと世界に売り込むべきだ。多くの外国人観光客が魅了されるに違いない。

 外国人にとって、日本はサラリーマンの国というイメージがある。だからこそ、日本の女性や子供が軽快な調べに合わせて踊る姿を紹介したい。20年近い景気低迷のあおりを受けて、日本は消極的で閉鎖的な国だと思い込まれている。だからこそ、阿波踊りを世界に披露したい。

 日本が誇れる数少ない天然資源の1つが、人だ。阿波踊りのような祭りは、日本人のパワーを証明する格好の機会になる。1つのイベントのためにこれだけ多くの市民が集結できるのだ。

 阿波踊りプロジェクトは観光を活気づけ、旅行代理店や航空会社にも恩恵をもたらす。既にエールフランス、全日本空輸、日本航空に話を持ち掛けている。多くの日本人観光客がパリの阿波踊りを応援するために駆け付け、パリの日本人コミュニティーも浴衣や着物を着て参加するだろう。

 パリにとっても恩恵がある。ヨーロッパ各地から多くの観光客が、阿波踊りに引き寄せられるだろう。

■同じあほなら踊らにゃ損、損

 私はこの夏、阿波踊りの故郷・徳島を訪れ、プロジェクトを宣伝する動画をYouTubeに投稿した。徳島選出の仙谷由人民主党副代表に東京の議員会館で会って話をしたら、「それなら準備のためにあさっての午後、徳島に飛ぼう」と言われたのだ。

 同じく徳島選出の後藤田正純衆議院議員も、高円寺が地元選挙区で阿波踊りに慣れ親しんでいる自民党の石原伸晃元幹事長も、協力を約束してくれた。ほかにもさまざまな人に声を掛けている。

 エアバス・ジャパンのステファン・ジヌー社長は特に協力的だ。彼は日本に来て20年、私と同じように日本人女性と家庭を築いている。彼も私も阿波踊りの美しさを理解しているし、外国人に与える衝撃も実感している。

 世界最大の旅客機エアバスA380なら、1回に最大540人の踊り手をパリに運べる。エアバスにとっても格好の宣伝ではないか。

 私たちはバカなことをしようとしているのかもしれない。でも、それが阿波踊りだ──踊るあほうに見るあほう、同じあほなら踊らにゃ損、損!

プロフィール

東京に住む外国人によるリレーコラム

・マーティ・フリードマン(ミュージシャン)
・マイケル・プロンコ(明治学院大学教授)
・李小牧(歌舞伎町案内人)
・クォン・ヨンソク(一橋大学准教授)
・レジス・アルノー(仏フィガロ紙記者)
・ジャレド・ブレイタマン(デザイン人類学者)
・アズビー・ブラウン(金沢工業大学准教授)
・コリン・ジョイス(フリージャーナリスト)
・ジェームズ・ファーラー(上智大学教授)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権が「麻薬船」攻撃で議会に正当性主張、専門家は

ビジネス

米関税で打撃受けた国との関係強化、ユーロの地位向上

ワールド

トランプ氏、職員解雇やプロジェクト削減を警告 政府

ワールド

インドと中国、5年超ぶりに直行便再開へ 関係改善見
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story