コラム

エルサレム首都宣言とイラン核合意破棄の類似性

2017年12月11日(月)20時00分

ユダヤ人富豪とクシュナーの影響なのか

では、なぜトランプ大統領は歴代大統領が避けてきた、エルサレムがイスラエルの首都であることを認め、宣言したのであろうか。ニューヨーク・タイムズはその背景に、トランプ大統領を支持する大富豪であるシェルドン・アデルソンが強い影響力を働かせたのではないかと報じているる。

この記事によれば、アデルソンはトランプ大統領が就任してから半年後に「エルサレム大使館法」の一時停止を継続する大統領令に署名したことに対して激しく抗議し、トランプ大統領は大口の支援者であるアデルソンの機嫌を損ねないようにエルサレムをイスラエルの首都であると宣言したのではないかとみている。

また、政権内でもトランプ大統領との関係があまり良くないとされているティラーソン国務長官や、マティス国防長官らが反対したにも関わらず、最終的にアデルソンと関係が深いユダヤ教の敬虔な信者である娘婿のクシュナー大統領顧問がエルサレム首都宣言を認めたことが大きな決め手になったとも報じられている

クシュナーはトランプ政権において中東和平を進める責任者であり、ただでさえユダヤ人であることで誠実な仲介者となるかどうか疑問視されていたが、11月に突然のように中東和平案を年内に作成すると宣言し、政権を上げた取り組みになると主張した。この中身については未だに明確になっていないが、これまでの経緯から考えるとクシュナーが進めてきたサウジアラビアやUAEとの関係強化によって、イスラエルに有利な条件であってもサウジやUAEがそれを受け入れることによってパレスチナ自治政府の反対は押し切れるという読みがあるのではないかと考えられる。実際、サウジが進めるイエメン内戦への介入やカタールとの断交、イランとの対立に関して、トランプ大統領もクシュナーも全く関与せず、サウジに中東地域の秩序形成の白紙委任状を与えている状態であり、これが中東和平を進めるための布石だ、という見方もある(なお、国務省にはこうした戦略は伝えられておらず、それ故ティラーソン国務長官とホワイトハウスの話がしばしば食い違うともみられている)。

プロフィール

鈴木一人

北海道大学公共政策大学院教授。長野県生まれ。英サセックス大学ヨーロッパ研究所博士課程修了。筑波大大学院准教授などを経て2008年、北海道大学公共政策大学院准教授に。2011年から教授。2012年米プリンストン大学客員研究員、2013年から15年には国連安保理イラン制裁専門家パネルの委員を務めた。『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2011年。サントリー学芸賞)、『EUの規制力』(共編者、日本経済評論社、2012年)『技術・環境・エネルギーの連動リスク』(編者、岩波書店、2015年)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は3日続落、決算一巡で手掛かり難

ビジネス

ブリヂストン、今期純利益見通しは3.9%増の340

ビジネス

午後3時のドルは153円前半へ上昇、高市政権の姿勢

ビジネス

米アルファベット社債、投資家保護条項欠如に懸念の声
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 9
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 10
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story