家族と離れて生き残ることに何の意味があるのか...ガザから一人逃れた23歳のアーティストが語る胸の内
Voices From Behind the Wall
今も毎朝、罪悪感にまみれて目覚める。自分の選択は正しかったのか? この戦争はいつ終わるのか? ガザに残る家族が爆撃と飢えと渇きに耐えているとき、私だけまともな生活を送る権利があるのだろうか? ひとりのパレスチナ人として思う。私たちにはふつうの、人間らしい暮らしをする権利さえないのか。それでも私は希望を捨てない。いつの日かきっと、家族をここへ呼び寄せられると信じている。私は当地の大学に入りなおし、画家としての活動も再開した。「家を探して」の絵は持ってきた。エジプトの首都カイロに落ち着いて今日で3か月。毎日が罪悪感と無力感の連続だ。家族とはほとんど連絡を取れない。むこうはインターネットの接続が弱いからだ。家族とつながっていない。この感覚は耐えがたい。
だから自分に言い聞かせる。私は家族のためにここへ来たのだと。私の未来は家族と共にある。いつかきっと恩返しする。過去10年に描きためた絵はすべて失ったけれど、自分のギャラリーを開くという夢は捨てない。まだ生きる時間はあるのだから、必ず自分の夢をかなえてみせる。絶対に。パレスチナ人だもの、失うことには慣れている。そして生き延びることにも。
ガザよ、わが故郷(ふるさと)よ。こんな状態のあなたを見るのはつらい。あなたはどんなときも私たちを守り、育ててくれた。だから私たちはあなたを愛する。あなたがどんなに破壊されても、平和なときも戦争のときも愛し続ける。そしていつの日か、あなたを再び愛すべき故郷(ふるさと)に再建してみせる。あなたを想う気持ちは絶対に変わらない。あなたの解放の日は近い。だからくじけないで。

アヤ・ザクト
Aya Zaqout
現在はエジプトを拠点に海外のギャラリーで作品展示を行っている。ガザにいる家族は北部に戻れておらず、帰還がかなったにせよ戻れる家屋はない。カイロでの家族との再会を目指しているが、国境封鎖が解かれてもそれには最低1万ドルがかかるという。
We Are Not Numbers: The Voices of Gaza’s Youth
『〈ガザ〉を生きる パレスチナの若者たち10年の手記』
【編】アフメド・アルナウク、パム・ベイリー
【訳】沢田博&チーム・アルミナ
四六判上製/332ページ/2400円+税
原書房より2025年12月8日刊行
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
【関連記事】
爆撃の下で約束された「未来」――ガザで結婚を夢見た若者たちの戦争のリアル
トラックに殺到する飢えた群衆を襲った「銃弾の雨」...虐殺の生存者が見た、ガザ民族浄化の現実





