人助け? それとも貧困層からの搾取? 20兆円市場に成長した「代理出産」の光と影

SURROGACY UNDER SUSPICION

2025年12月17日(水)17時20分
ヘスス・メサ(政治担当)

生命と家族の定義をめぐる議論

こうしたなか、代理出産支持派は、全面禁止よりも国際的なルールで規制するほうが倫理的な対応だと主張する。「倫理的な代理出産の条件が整備されているのは今のところカナダとアメリカの多くの州、そしてメキシコシティだけだ」と、プールダヤンは言う。「これらの地域では代理母は厳しく審査され、十分な情報を与えられて権利が守られている」

他の地域では虐待や搾取があることを認めた上で、完全に禁止するのではなく、より厳格な倫理的枠組みの構築が重要だと、プールダヤンは主張する。「代理出産を全て認めろと言うつもりはない。可能な限り倫理的なやり方にすべきだ」


彼が率いる組織は詳細な倫理ガイドラインを定め、その基準を満たした代理母と契約を結ぶカップルに限り、経済支援を行っているという。

プールダヤンに言わせれば、代理母が全て金目当てだと決め付けるのは間違いだ。「そんなふうに言う人は、誇りを持って代理出産をする女性や代理出産で生まれて幸福に育っている子供を知らないのだ......これは理屈じゃない。その子たちは現に私たちの家族になっている」

代理出産をした女性たちも自分たちの声を無視して議論が進むことに違和感を抱いている。3家族のために5人の子供を産んだクレアは依頼人のカップルが待ちわびていた赤ちゃんと初めて対面する場面はとても感動的だと話す。産んで良かったと心から思える瞬間だというのだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRBは利下げ余地ある、中立金利から0.5─1.0

ビジネス

訂正-再送-米ワーナー、パラマウントの買収案を拒否

ビジネス

企業は来年の物価上昇予測、関税なお最大の懸念=米地

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中