さらなる暗黒地域が...ミャンマー詐欺拠点「大救出劇」で浮き彫りになったサイバー詐欺産業の脅威

SOUTHEAST ASIA’S SCAM INDUSTRY “CRACKDOWN”

2025年3月12日(水)17時00分
ジェイコブ・シムズ(ディプロマット誌コラムニスト)

サイバー犯罪は金のなる木

カンボジアではスターリンクの利用はずっと禁止されていた。反体制派がスターリンクを通信手段として使うのを防ぐためだ。

だが国内の反体制派を一掃した今、政府の優先順位は変わった。国境地帯でサイバー犯罪を続けさせるには安定した通信アクセスが不可欠で、その確立が犯罪王国カンボジアにとって、国家安全保障上の最重要事項となった。


だが、忘れないでほしい。ここへきてミャンマーのBGF/DKBAを動かしたような政治・経済的圧力はカンボジアにも3年ほど前からかかっていた。しかしそれで得られたのは、カンボジア政府による「度重なる否定とごまかし、弾圧のサイクル」だけだ。

政府の「公認」を得たカンボジアのサイバー詐欺産業は、恐ろしく国内外からの圧力に強い。国際社会の圧力もカンボジアの国策詐欺を止められない、と言うつもりはない。だが今までのような圧力では効かない。もっと巧妙で、揺るぎない多国間の協調が必要だ。

こうした犯罪は世界中で猛威を振るっており、その被害はどこの国でも深刻だ。彼らを野放しにし、上納金を得ているのは小規模な反政府勢力かもしれないし、国際社会公認の(ただし腐り切った)国家かもしれない。

いずれにせよ、国境を超えた強制労働サイバー犯罪が途方もなく儲かるビジネスであることは紛れもない事実。だから、簡単にはなくならない。世界中の政府が腹をくくり、これは各国の、いや国際社会の利益を守る戦いだという認識を共有しない限り、流れは変えられない。

From thediplomat.com

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産加速で合意の公算 5

ワールド

IAEA、イランから全査察官撤退 核施設のアクセス

ワールド

ハマス、ガザ停戦巡る米提案に「前向き」回答=当局筋

ワールド

ザポロジエ原発、電力供給が回復 ロシアの攻撃で一時
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 6
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    1000万人以上が医療保険を失う...トランプの「大きく…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中