「宇宙支配」を狙う中国の「静かなる第一歩」がチリで始動、大量の「ミニ中国」を南米に作る真の目的は?

CHINA’S SPACE LEAP

2025年1月10日(金)13時33分
ディディ・キルステン・タトロウ(本誌米国版・国際問題担当)
アタカマ砂漠の望遠鏡

アタカマ砂漠の望遠鏡 LUCAS AGUAYO ARAOSーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

<軍事・民間研究で「宇宙強国」を目指す習近平政権。建国100周年の2049年までには「中国を世界の頂点」にすることを目標に着々と開発を進めている──(独自調査)>

世界最強の宇宙大国になるという中国の野望が、月や惑星、そして南米チリのアタカマ砂漠(Atacama Desert)にまで及ぼうとしている。

砂漠といっても赤茶色の岩だらけで、アンデス山脈に近い標高2000メートルの高地だが、中国はそこに天文台を建設して、地球を周回する衛星や宇宙ステーションを観察したり、新しい星を見つけたりしようとしている。

それだけではない。この天文台は、中国の軍事目的での宇宙開発を支える場所にもなりそうだ。


中国はここ数十年で、アメリカの目と鼻の先にあるカリブ海の島々から、いてつく北極圏まで、世界中にプレゼンスを確立してきた。

中国の貨物船や軍艦にとって補給基地となる港湾は世界各地に建設されているし、中国共産党とつながりのある組織は、太平洋の小島から、アメリカの地方都市にまで進出している。



中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、今世紀半ばまでに中国を抜きんでた大国にすること、そして新しい国際秩序を確立することを公然と目標に掲げてきた。チリのベンタロネス天文台(Cerro Ventarrones)は、こうした目標を実現するための拠点の1つにすぎないだろう。

かねてから中国は、自らに背を向ける台湾を少しずつ締め上げて獲得しようとする「アナコンダ戦略」を取ってきた。そして今、台湾以外の領域でもその手法を取ろうとしている。

とりわけ近年の世界的な影響力拡大は、国防と科学研究、そしてビジネスが連携して中国共産党のために動く仕組みが確立したことで、一段と明白になってきた。

なかでも宇宙開発でアメリカに対して優位に立てば、携帯電話から金融、そしてミサイル誘導まで、地上での活動に決定的な影響を与えることができる。

展覧会
「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

焦点:英の根強い物価高に中銀が懸念強めるか、8月に

ワールド

NZ、米社製ヘリとエアバス機を16億ドルで購入へ 

ビジネス

マクロスコープ:不動産売買規制、熱帯びる議論 東京

ワールド

米関税が成長の足かせ、インフレ見通し穏やか=インド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 4
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 5
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 10
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中