トランプは簡単には関税を引き上げられない...世界恐慌を悪化させた「禁じ手」を含む「4つの秘策」とは?

Trump, the Tariff Man

2024年11月26日(火)17時56分
キース・ジョンソン(フォーリン・ポリシー誌記者)

そもそもなぜ関税なのか

一律の高率関税案には、エコノミストを納得させるデータも諸外国の政府を納得させる理屈もない。トランプ・ワールドの住人でさえ、今なぜ関税なのかは、たぶん理解できていない。トランプ自身は、関税で政府の収入が増えれば連邦所得税をゼロにできると示唆したこともある。

第1次トランプ政権では2017年に大幅減税を行ったが、所得税に関する部分は時限立法で、25年末に終了する。第2次政権は減税を延長する意向だが、それで生じる歳入減を補う財源として期待されるのが高率関税というわけだ。


直接税(所得税など)を減らす代わりに間接税(消費税や関税など)を上げるのは常套手段だが、第1次トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトンは高率関税が貿易戦争の引き金になることを懸念し、「真っ先に心配なのは関税だ。政権発足から半年で経済危機が起こるかもしれない」と語っている。

だが第1次トランプ政権で米通商代表部(USTR)の代表だったロバート・ライトハイザーらは、割高になった外国製品が敬遠されれば米国内の製造業が復活するという理屈で高率関税を高く評価している。現実には、国内製造業に関税効果が表れるには時間がかかり、ひどく効率が悪いのだが。

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