最新記事
反民主主義

トランプが勝てば危機に瀕する米欧の民主主義

LIBERAL DEMOCRACY HANGS IN THE BALANCE

2024年8月7日(水)10時49分
ヨシュカ・フィッシャー(元ドイツ外相)

三権分立、自由で公正な選挙、法の支配、少数派に対する憲法上の保護、表現の自由といった基本的権利を特徴とする西欧の自由民主主義は、第2次大戦とその後の冷戦におけるアメリカの勝利の結果だ。アメリカがリベラルな民主主義の原動力と模範としての役割を放棄するなら、リベラルな西側諸国、とりわけヨーロッパが危うくなる。

トランプが勝利すればヨーロッパ中で極右・民族主義政党を後押しすることとなり、アメリカがウクライナ支援を打ち切ればロシアは有利になる。EUの取り組みは大きな危機を迎える。ヨーロッパがナショナリズムに逆戻りすれば、私たちは自らの運命を決定し、子や孫のために平和と自由を確保する最後のチャンスを無駄にする。


大国間の対立、グローバルサウスの台頭、先進国の少子高齢化による経済の弱体化、新たな技術革命──そうした地政学的な環境の変化を考えれば、ヨーロッパが明日の世界を形づくるチャンスは今しかない。

11月5日の米大統領選には、多くのことが懸かっている。ここリベラルなヨーロッパで私たちが知る世界は、11月6日の朝に消えているかもしれない。

©Project Syndicate

PS_Joschka Fischer130.jpgヨシュカ・フィッシャー
JOSCHKA FISCHER
左翼活動家から政治家に転身。ドイツ緑の党の中心人物として、ヘッセン州環境・エネルギー相などを歴任した後、シュレーダー政権では連邦外務大臣兼副首相を務めた。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中