最新記事
戦場ウクライナの日本人たち

ウクライナ戦場で勲章を受けた日本人「BIGBOSS」...48時間の「脱出劇」

JAPANESE IN UKRAINE

2024年6月7日(金)13時50分
小峯 弘四郎(フォトジャーナリスト)

その直後からまた戦闘が激しくなり、ドローンからたくさんの爆弾が降ってきた。まだロシア軍の陣地にいるのでウクライナ軍のドローンだ。さすがにウクライナの攻撃では死にたくない。なるべく速く匍匐前進すると、ついに自分たちの拠点が見える場所に着いた。

ただその場所に行くには、スナイパーが狙う大きな道路を横切る必要がある。匍匐前進で行くわけにもいかず、2キロぐらい迂回してやっとウクライナ兵のいる地域に着いた。負傷し、敵拠点から脱出を始めて約48時間が経過していた。

Bさんはすぐにドイツの病院に移送された。手術中に死ぬ可能性もあると言われたというが、手術は成功し、驚異的な回復力で3カ月後には歩行訓練を始めた。4月にウクライナへ戻り、リハビリを続けている。

「本当にいい経験になった」と、Bさんは言う。「本当の強さは、このような苦境から生まれる。完治したらまた戦線に復帰するつもりです」

この時の戦闘で、Bさんの仲間が4人戦死している。

「自分だけがここで兵士を辞めるわけにはいかない。自分の目で戦場を見てしまった以上、このまま無視することもできません」

◇ ◇ ◇


なぜ、ウクライナにまで行って日本人を取材するのか。ロシアの侵攻以前から在住する人、侵攻以後にやって来たボランティア、義勇兵、またはジャーナリストや写真家......。外務省から退避勧告が出ており、日本人義勇兵には戦死者も出た。それでも、それぞれが日本人として思いや考えを持ちながら、戦時下のウクライナに滞在し続けている。彼らを知ることは、ウクライナと戦争を忘れがちな日本人が、少しでも何かを考える助けになるはずだ。

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ネタニヤフ首相、イランとの戦争で「和平の機会拡大」

ワールド

クアッド外相会合、7月1日に開催=米国務省

ワールド

SCO国防相会議、共同声明採択至らず 「テロ」言及

ワールド

ベゾス氏の豪華結婚式、ベネチアで始まる 芸能・政財
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中