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米ロ関係

【本誌調査で判明】米政府、モスクワの大使館維持のためにロシア企業と契約 800万ドルの支払いは妥当か?

THE PRICE OF DIPLOMACY

2024年3月13日(水)13時30分
ケイト・プラマー(本誌記者)

戦争への倦怠感が広がるなかで、以前ウクライナ支援の法案に反対したこともあるフルチャーは、米政府の資金でロシア企業を儲けさせることに疑問を投げかける。

「アメリカの企業に発注して、アメリカ人の雇用をつくり出すべきだ」と、フルチャーは主張する。「他国と良好な関係を築くことの大切さは理解しているが、悪い行動を取っている国の経済を潤わせるべきではない。しかも、アメリカは莫大な債務を抱えていて、その金額は膨らみ続けている。よその国に、ましてやロシアに資金を流す余裕などない」

ジャーナリストのテムニッキーも、ロシアに対して通常どおりの接し方を続けることには反対だと言う。ロシアとの外交関係を縮小するべきだと考えているのだ。

「世界の国々は、安全でないと判断した国から大使館職員を引き揚げたり、敵国との外交関係を縮小したりすることがある」と、テムニッキーは言う。「ロシアは戦争を終わらせることに、交渉で戦争を終結させることに、明らかに関心がない。このような状況でロシアとの外交を前進させることなど不可能だ」

しかし、本誌が話を聞いた専門家の中には、米国務省の主張に賛同する人たちもいる。大使館運営のためにロシア企業と結んでいる契約はありきたりの内容だし、避けることのできないものだというのだ。

マイヤーズはこう述べる。「国務省はあらゆる国で大使館のサポートのために現地の企業や人間に業務を発注している。ほとんどの場合、仮にコストが途方もなく膨張することを容認したとしても、アメリカ企業に発注することは難しい」

「アメリカの働き手をロシアに連れて行こうとしても、業務が地元の人たちにも実行できるものであれば、ロシア政府が許可を出さないだろう。この種の問題をめぐって国家間の摩擦が生じることが時々あるが、こうした些細な問題をあおるのは双方にとって得策ではない」

さらにマイヤーズは、「大使館を維持するために税金を用いることは、有効な外交政策に不可欠だ。外交は大統領の憲法上の権限でもある。相手国のリーダーの思考様式を理解した職員が現地にいなければ、理にかなった外交政策を確立することは難しい」とも言う。

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