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ガザ紛争

「全てがここから指揮された」...ガザで国連機関UNRWA施設の地下にトンネル、イスラエル軍「ハマス指揮所」と主張

2024年2月12日(月)12時23分
ロイター
ガザ UNRWA

イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザ北部にある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)本部の地下につながる長さ約700メートルのトンネル網を発見したと発表した。イスラム組織ハマスが同機関を悪用した新たな証拠だとしている。2月8日、ガザで撮影(2024年 ロイター/Dylan Martinez)

イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザ北部にある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)本部の地下につながる長さ約700メートルのトンネル網を発見したと発表した。イスラム組織ハマスが同機関を悪用した新たな証拠だとしている。

UNRWAを巡っては、昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲攻撃に職員が関与したとの疑惑が浮上し、内部調査を進めている。疑惑を受けて米国など十数カ国が資金拠出を一時停止した。

イスラエル軍は、外国メディアの記者をこのトンネルに案内した。UNRWA本部近くの学校の隣に地下へ続く垂直の坑道があり、そこからトンネルに入った。コンクリートで壁を固めた内部は息苦しい暑さで、狭い通路をところどころ曲がりながら20分ほど歩くと、UNRWA本部の下に到達したと案内役の同軍中佐は説明した。

トンネルの長さは約700メートルで深さは18メートル。数か所で分岐し、小部屋も設けられていた。事務作業をするスペースもあり、中には鋼鉄製の金庫も設置されていたが、扉が開けられ空の状態だった。タイル張りのトイレのほか、コンピューターのサーバーや工業用バッテリーが積まれた部屋もあった。

案内役の中佐は、「全てがここから指揮された。あなた方が歩いてきたトンネルの電源は、ここから供給された。ここは情報の中央指揮部隊であり、ハマスの情報部隊が戦闘のほとんどをここで指揮した」と述べた。この中佐は、イドという名しか明かさなかった。

同中佐によると、ハマスはイスラエル軍の侵攻を前にこの場所から撤退し、通信ケーブルを切断したとみられる。地上部分を案内した際、同中佐はUNRWA本部の床を走る同ケーブルを記者らに示した。

UNRWAは声明で、紛争開始から5日後の10月12日に同本部を撤退しており、イスラエル軍の発表について「確認やコメントはできない」とした。

また、「UNRWAには、使用している施設の地下に何があるのかを軍事的に検査する専門性や能力がない。過去にUNRWAの地下に疑わしい空洞が見つかった際には、ガザの事実上の支配勢力(ハマス)とイスラエル当局を含む紛争の当事者に、速やかに抗議の書簡を送っている」としている。UNRWAは、ガザ地区で1万3000人を雇用し、長年に渡って援助を頼りとする人々のライフラインとなってきた。学校や診療所などの社会サービスを運営したり、支援物資等の配布を行っており、純粋に人道的な活動を行っていると説明している。イスラエルは、同機関には「ハマスが浸透」していると主張。ハマス側は、民間施設での活動を否定している。

[ロイター]


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