最新記事
ロシア軍

<動画>退却しようとする味方に発砲するロシア軍──銃で戦闘続行を強いる「督戦隊」か(ウクライナ・メディア)

Video shows Russian military shooting own retreating troops: Ukraine media

2023年6月13日(火)19時18分
ジョン・ジャクソン

志願兵を募集するロシア軍の巨大ポスター(5月30日、モスクワ) Maxim Shemetov-REUTERS

<英国防省の諜報部門が昨年11月にその存在を報告したロシア軍の「退却阻止」部隊の蛮行とみられる動画がウクライナで話題に>

メッセージアプリ「テレグラム」上にあるウクライナのチャンネルに6月12日、ドローンで撮影したとされる動画が投稿された。ロシア軍の兵士3人が、退却する仲間の兵士少なくとも7人に向けて発砲する様子、ということだ。

【動画】逃げる味方を撃つロシア部隊

問題の動画は、ウクライナ内務省の支援を受けて創設されたプロジェクト「自国民を探せ」が投稿したものだ。同プロジェクトは、ウクライナでの戦闘中に捕虜になったり死亡したロシア兵の親族が彼らを探せるように、写真や記録を共有する活動を行っている。

ウクライナの英字紙「キーウ・ポスト」は、この動画はウクライナのメディア「UNIAN」が本物と確認したと報じた。UNIANによれば、味方の兵士に向けて発砲しているのはロシア軍「督戦隊」の兵士たち。キーウ・ポストはこの「督戦隊」について、「必要とあれば殺傷力の高い武器を使ってでも、味方の兵士が戦闘から逃げるのを阻止することが任務」だと説明した。

動画はロシアの活動家グループ「アクティバティカ」がツイッター上で共有したが、これが本物かどうか本誌では確認ができていない。本誌はこの件についてロシア外務省にメールでコメントを求めている。

「逃げれば撃つ」と仲間を脅す

「督戦隊」とみられる兵士たちは、おそらく警告のために空に向けて発砲した後、退却する兵士たちに直接発砲している。発砲を受けた兵士たちが死亡または負傷したかどうかは分かっていない。

ソ連崩壊後の国際政治を専門とするジェイソン・ジェイ・スマートは本誌に対し、「ロシア軍の兵士が味方の兵士を撃つ行為は、ロシア軍においてはずっと以前から行われてきた。今回の戦争でも当たり前に行われてきたことだ」と述べた。

キーウ・ポストの特派員も務めるスマートはさらに指摘した。「兵士たちは人命を守ることに関心がない。今回の出来事は、まさにロシア軍の考え方や行動そのものだ」

ロシア軍がウクライナに「督戦隊」を配備していることは、昨年11月に英国防省が確認していた。同省は報告書の中で「ロシア軍は士気が低下したり戦闘を嫌がる兵士に対処するため、兵士の退却を阻止する『督戦隊』を導入したようだ」「これらの部隊は兵士たちに攻撃態勢を維持させるために、退却する者は撃つと脅す。過去の戦いでも使ってきた手だ」

英国防省はまた、同部隊の存在について次のように評した。「戦場から逃げる兵士を撃つというやり方は、ロシア軍の質が低く、士気が低く、規律が取れていないことの証拠だ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調

ビジネス

米フォード、4月の米国販売は16%増 EVは急減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中