最新記事
トルコ

超インフレ、通貨暴落、地震被害...招いた張本人が危機をあおって「救世主エルドアン」となる、トルコの皮肉な現実

Why Erdogan Won

2023年6月5日(月)13時23分
ギョニュル・トル(米中東研究所トルコ担当理事)
エルドアン

一時は野党優勢も伝えられたが、しぶとく再選を勝ち取り、大統領官邸前で勝利演説を行うエルドアン UMIT BEKTASーREUTERS

<大衆迎合型の独裁者は社会不安に付け込み、勝ち目がない選挙でも勝利をもぎ取る。独裁者なのに枕を高くして眠れるエルドアンとトルコ社会について>

5月28日に決選投票が行われたトルコの大統領選では、野党の健闘ぶりが目立った。敗北を喫したのは、重武装した相手に素手で立ち向かうに等しい戦いだったからだ。

相手は自分が有利になるよう選挙制度を変える独裁者、現職の大統領として再選に挑んだレジェップ・タイップ・エルドアンだ。

湾岸諸国の強権的な指導者たちもエルドアンに味方した。選挙前のバラマキで一層悪化した財政・金融危機を緩和するために多額の資金を提供したのだ。

野党は専門家が推奨する「選挙で独裁者を倒す方法」をことごとく実行した。諸党派が団結し統一候補を擁立する、差し迫った問題に対する具体的な処方箋を示し、中傷合戦に陥ることなく建設的な選挙運動を展開する、などだ。

今回の大統領選は政権交代のまたとないチャンスだった。政治腐敗など、エルドアンの長期支配の弊害があらゆる所で噴き出していたからだ。お粗末な経済運営に加え、非伝統的な金融政策をかたくなに推進し、インフレ率は一時3桁台を記録。中央銀行の純外貨準備高はマイナスに転じた。

今年2月上旬に南東部で起きた大地震では、政府の対応の遅れで助かる命も助からず、死者は5万人を超えた。

こうした状況を受け、トルコ全土で変化を求める声がかつてなく高まっていた。それでも野党は苦杯をなめた。一体何が起きたのか。

民主主義より生活が大事

答えの一部は、公正でもなければ自由でもない選挙制度にある。

エルドアン支配下のトルコでは、野党は選挙で圧倒的に不利な立場に置かれる。エルドアンは人望のある野党政治家をありもしない罪に問い投獄する。国家の資源を選挙運動に使い、国営メディアを通じて自身の実績をアピールし、野党候補をおとしめる。

一方、野党候補は絶えず当局に妨害され、有権者に政策を伝えることもままならない。

まちづくり
川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に──「世界に類を見ない」アリーナシティプロジェクトの魅力
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英、ホルムズ海峡の商船保護巡り独・伊と協議 緊密な

ワールド

イスラエル外相「終わりなき戦争望まず」、終結時期は

ワールド

米国防長官、イラン攻撃「最も激しい日に」 最多の戦

ワールド

イランの「黒い雨」、WHOが健康被害を警告 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 7
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 10
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中