最新記事

テクノロジー

ChatGPTなどの生成AIブームと米大統領選 ディープフェイクにどう対処すべきか

2023年6月2日(金)10時25分
俳優の顔にワイヤーフレームがかけられた画像

2024年米大統領選挙戦へようこそ。ここでは「現実」をでっちあげ放題だ。写真はディープフェイク動画作成のため、俳優の顔にワイヤーフレームがかけられた様子。ロンドンで2019年2月撮影(2023年 ロイター)

「私、実はロン・デサンティス氏が大好きで」。あろうことか、共和党の大統領指名獲得争いに出馬したフロリダ州知事を支持していると暴露する民主党のヒラリー・クリントン元米国務長官。「この国が必要としているのは正に彼のような人。本気でそう思います」──。

バイデン米大統領も、ついに本性を露わにする。性別と性自認が一致しないトランスジェンダーの人物に対し、「おまえが本当の女性になれるものか」と暴言を吐くのだ。

2024年米大統領選挙戦へようこそ。ここでは「現実」をでっちあげ放題だ。

クリントン氏とバイデン氏そっくりの「ディープフェイク」動画は、ネット上の画像を基に訓練された人工知能(AI)が作成したもので、ソーシャルメディア上に何千件も転がり、二極化された米国政治の中で、事実とフィクションの境をぼやけさせている。

こうした合成メディアは数年前から存在していた。しかしロイターがAIやオンライン偽情報、政治活動などの専門家約20人に行ったインタビューによると、「ミッドジャーニー」など新しい生成AIツールが続々登場したことで本物そっくりのディープフェイクが安価に作成できるようになり、この1年で利用に拍車がかかっている。

「有権者が本物と偽物を見分けるのは非常に難しくなるだろう。トランプ氏支持者、あるいはバイデン氏支持者がこの技術を使って相手を悪者に仕立て上げることは想像に難くない」と、ブルッキングス研究所のテクノロジー・イノベーション・センター上級研究員、ダレル・ウェストは語る。

「選挙の直前に何かが投下され、だれも対処する時間がない、といった事態も考えられる」という。

先端技術が社会に与える影響を研究する非営利団体、センター・フォー・ヒューマン・テクノロジーの共同創設者、アザ・ラスキン氏は、ITセクターがAI装備競争を繰り広げる中、有害な偽情報から人々を守る仕組みが整わない状態でディープフェイク生成ツールが発表されている、と指摘する。

共和党の大統領候補指名をデサンティス氏らと争うトランプ前大統領自身、今月初めに自らのソーシャルメディア「トゥルー・ソーシャル」でCNNキャスターのアンダーソン・クーパー氏を加工した動画を公開した。

この動画ではクーパー氏が「CNNの大統領選集会中継で、私たちをさんざんたたきのめしているのはトランプ大統領だった」と語っているが、言葉と唇の動きは一致していない。

CNNは、映像はディープフェイクだと説明した。トランプ氏の代理人はコメント要請に応じなかった。動画は息子のドナルド・トランプ・ジュニア氏のツイッターに今週も残っている。

フェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどの主要なソーシャルメディア・プラットフォームはディープフェイクの禁止と削除に努めているが、その有効性にはばらつきがある。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中