最新記事
日本外交

日米関係が今こそ「中東で」進化を遂げるべきこれだけの理由

Achieving a New Asia Pivot, in the Middle East

2023年4月1日(土)18時30分
ジョシュア・W・ウォーカー(ジャパン・ソサエティー理事長)、アンドリュー・M・サイデル(ダイナミック・ストラテジーズ・アジアCEO)

今、日本にはリーダー的な役割を果たす上でかつてない機会がめぐってきている。その機運を生んでいる要因として、1つ目に、日本はアメリカにとって最も近い同盟国でありながら、アメリカではないということ。世界に対して日米同盟以上に何かをもたらし得る二国間関係は存在しない。

この関係性は、日本が自由や人権、民主主義を重んじるだけでなく、公平性、包括的資本主義、社会福祉について独自の解釈を提示する国であることと相まって、同国をより強固な地位に押し上げている。
 
日本は、社会に難題を抱え改革を必要としつつも、その社会が繁栄と包括性のバランスを取ろうとする上で、アメリカとは異なる解釈や見方を持っている。日米は同盟国でありながら同質の社会ではないため、その違いによって同盟関係の可能性・将来性が強化されているとも言える。
 
日本は近代において、経済と技術面で超大国の地位を獲得した最初の非西洋国でもある。また同国は、世界の半分以上の人口にとっての平和と安定、地域的繁栄を支える同盟関係の下支えをしてきた。

「戦後日本経済の奇跡」は、一生涯のうちに根本的に変革し、多くの富と尊敬を獲得した国として世界にとって明白な事例であり続けており、日本は地域諸国にとってもロールモデルとなってきた。

この信頼性とステータスは、中東の多くの国が日本に対し、今後さらに中東地域に参画し、協同関係を結び、リーダーシップを発揮することを期待する核心的理由でもある。
 
故・安倍晋三元首相は日米がより包括的で希望に満ちた二国間関係に変化することを予見し、単にパートナーになるだけでなく、地域・世界・同盟関係においてリーダーになることを望んでいた。

安倍は環太平洋パートナーシップ(TPP)を支持し、自由で開かれたインド太平洋を提唱し、イスラエルとパレスチナ間の和平交渉の仲介役を務めることさえ提案していた。彼はイスラエルと日本の新しい関係を設計する上での立役者だった。

岸田文雄首相は3月にインドの首都ニューデリーとウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問した際、自由で開かれた社会へと前進させる先導役を務める意志を示した。これは、習近平とプーチン露大統領の会談とは真逆の路線である。今後、韓国とより多方面で協同していく可能性も浮上しており、これも域外での協同を模索する上での好機をもたらしている。

バイデン米政権はこれまで、日本がさまざまな国との同盟関係を発展させる上でより積極的な役割を担うよう後押ししてきた。そして今度は、日本が中東においてアラブの友好国やその他の相手国との関係を発展させるときが来た。

アメリカと日本、そしてイスラエルの政権が考えるべき問いは、異なる世界観や価値を持つ他の国々が何をもたらしているかではない。

むしろ、同じ価値観や同盟、資産を共有するわれわれが共に社会をさらに安定させ、新しい成長をもたらすために何ができるのか。さらには、イノベーションと多様性、公平性が繁栄をもたらす鍵になりつつある脱炭素後の世界で、共に何ができるかを考えるべきだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中