最新記事
事故

韓国、宙を飛んだ暴走SUV 運転ミスか車両の欠陥か、立証義務は誰にある?

2023年3月3日(金)21時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

イ・サンフン氏は「まだ夢の多い12歳の息子を天国に送り、当時運転をしていた母親は刑事被告になってしまった。母は孫の世話するため50年間暮らしてきたソウルを離れ、知人もいない江陵にやっきて、8年以上孫の登下校の送り迎えをしていた。事故当日もいつものように塾から家に帰ってくる途中、あまりにも悲惨で想像もできなかった急発進事故で突然別れることになった」と伝えた。

さらに「事故に遭って訴訟を準備しながら感じたのは、息子を亡くした悲しみと痛みの苦しみの中で、完全に哀悼することも出来ないまま暴走事故がなぜ発生したのかについて事故原因の究明を非専門家の事故当事者や遺族が証明しなければならないという悔しさ、もどかしさだった。この韓国の現実にうっ憤が爆発して胸が潰れた」と心境を吐露した。

彼は「事故にあったことも悔しいが、どうして原因究明を事故当事者である私たちがしなければいけないのか。専門家ですら難しいことを、当事者や遺族が自動車の欠陥を立証することは事実上不可能に近く、これによってメーカーの責任回避が続いている」と強調した。

こう話していたイ・サンフン氏の熱意が通じた。請願申請6日目の2月28日に5万人が同意し、政務委員会と法制司法委員会に付託された。

交通事故の専門弁護士「無罪判決を勝ち取る」と宣言

また専門家もイ・サンフン氏を応援しようと立ち上がった。検事出身で交通事故専門の弁護士として知られる韓文鉄(ハン・ムンチョル)弁護士は、ケーブル放送局JTBCの自身の番組『韓文鉄のブラックボックスレビュー』、そして自分のユーチューブチャンネル『韓文鉄TV』で、この事故について取り上げ、「この事件が裁判所に起訴されれば私が無罪判決を勝ち取る」と宣言。そして「急発進が疑われる事故の問題が根本的に解決されるその日まで、問題を提起する」と覚悟を表わした。

果たして、暴走事故の原因はA氏の操作ミスか、あるいは車両自体の欠陥だったのか? 何れにせよ、責任の所在をユーザーではなく自動車メーカーが明らかにすべきというPL法改定が待たれるところだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハマス、人質のイスラエル軍兵士の遺体を返還へ ガザ

ワールド

中国外相、EUは「ライバルでなくパートナー」 自由

ワールド

プーチン氏、G20サミット代表団長にオレシキン副補

ワールド

中ロ、一方的制裁への共同対応表明 習主席がロ首相と
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 10
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中