最新記事

戦争犯罪

引き抜いた歯にガスマスク......ハルキウで見つかった拷問の証拠品──ウクライナ当局

Photos Show Evidence of Teeth Pulling, Live Burials in Russian Torture Room

2022年10月5日(水)16時13分
アンドリュー・スタントン

拷問部屋として使われていたハルキウ州イジュームの警察署の壁にガスマスク(9月18日) Umit Bektas-REUTERS

<ウクライナ侵攻直後から虐殺や拷問で非難されてきたロシア軍。その戦争犯罪を問うための新たな「証拠」が公開された>

ウクライナ政府幹部が10月4日、東部ハルキウ州の村で撮影された、拷問部屋の存在を裏付ける証拠という写真を公開した。

ロシア兵によって戦争犯罪や虐待が行われているとの告発は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2月24日にウクライナでの「特別軍事作戦」を開始した直後から相次いでいた。

ウクライナ内務省のアントン・ゲラシチェンコ顧問は、虐待を告発する最新ツイートで、ピスキー=ラドキウスキ村で拷問があった証拠とみられる複数の写真を公開した。

そのうちの1枚には、地面に打ち捨てられたガスマスクが映っており、同顧問によればこれは拷問に使われたものだという。もう1枚に写る箱には、虐待の被害者から無理やり引き抜かれたとみられる歯が集められている。さらにこの村では、人が生きたまま地中に埋められた形跡も見つかったと、ゲラシチェンコは書いている。

「捜査官たちは、ハルキウ州のピスキー=ラドキウスキ村で拷問部屋を発見した。生き埋めにしたり、燃えている布を(窒息させるため)ガスマスクに入れるといった拷問の事例が報告されている。引き抜いた(金)歯を集めた箱も見つかった」と、ゲラシチェンコは10月4日にツイートした。

ウクライナ国家警察は10月3日、メッセージアプリ「テレグラム」への投稿で、拷問部屋とされるこの場所が見つかったと発表していた。

「またしても、ロシア人占領者たちによる拷問部屋だ。ロシア占領から解放された後、我が国の警察官たちは、「解放者」を名乗る軍隊が行った戦争犯罪の事例を記録している。ロシア軍の兵士はこの村に入ると、地元民を家から追い払い、自分たちの住居とした」と投稿には書かれている(ウクライナ語からの翻訳を参照)。

警察が見つけた拷問部屋は地下室にあり、地元民たちが「非人道的な状況で閉じ込められていた」という。

「人々は脅され、殴られ、暴行を受けた」と投稿には書かれている。

再びニュルンベルク裁判を

ウクライナ警察は、ハルキウ市から南東約160キロ弱の場所にある小さな村の家々で、ロシア軍の複数部隊が略奪行為をはたらいたと主張している。10月4日午後の時点では、被害を受けたとみられる住民の人数を含めて、拷問とされる行為に関するこれ以上詳しい状況は明らかになっていない。

今回の戦争が始まって以来、ロシアは、ウクライナの兵士や民間人を拷問しているとする告発に直面してきた。これを受けてウクライナは、第二次大戦後に設けられた「ニュルンベルク裁判にならった形」の戦争犯罪裁判を設置するよう、9月の国連総会で訴えていた。

ウクライナメディアの取材に応えたある男性は、ハルキウ州の別の村で、肉体的・精神的な拷問を受けたと語った。この男性は、後頭部を殴打され、あばら骨を折られた末に、拷問部屋に連行されたという。

AP通信によると、9月上旬にウクライナ軍によって解放されたイジュームの町では、虐待が行われていたとみられる場所が、既に10カ所見つかっている。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相

ワールド

中国、台湾への干渉・日本の軍国主義台頭を容認せず=

ワールド

EXCLUSIVE-米国、ベネズエラへの新たな作戦

ワールド

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中