最新記事

中国

習近平の統治下で「中国は弱体化した」、なぜ続投が可能なのか

XI IS WHAT YOU SEE

2022年10月22日(土)14時25分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)
中国共産党大会

習の下で中国の地盤沈下が大きく進んだ(2017年の第19回共産党大会) THOMAS PETER-REUTERS

<経済減速と人権弾圧で、中国の地盤沈下が大きく進んだ。過大評価されてきたこの男は、いかに権力闘争を勝ち抜き、何のために3期目続投を狙ったのか。誰が反対しているのか>

今年は習近平(シー・チンピン)にとって、10年前に中国の最高指導者の座に就いて以来最悪の1年と言っていい。しかも、タイミングも悪い。

習が10月16日開幕の第20回共産党大会で党総書記として、そして来春の全国人民代表大会(全人代)で国家主席として3期目の続投に向けて動いてきたことは明白だった。実際、2018年には既に憲法を改正して国家主席の任期制限を撤廃している。

今年がひどい1年になったのは、おおむね自分がまいた種だ。

厳しいゼロコロナ政策に基づくロックダウン(都市封鎖)が経済に大きなダメージを及ぼし、上海市の経済は第2四半期に13.7%のマイナス成長を記録した。ウクライナ戦争ではロシア寄りの姿勢を打ち出したが、軌道修正を余儀なくされた。

中国は面目を失い、習の判断力に疑問を持つ人も増え始めている。

しかし、習はもともと過大評価されてきた。習がトップに就いたとき、中国は歴史的に見ても有数の絶好調な時期だったのだ。

GDP成長率は8%近くに達し、中国は世界のサプライチェーンの中心という地位を確固たるものにしていた。

2008年に行われた北京夏季五輪は世界で称賛され、同年5月に発生した四川大地震には香港の人々から莫大な寄付が寄せられた。

221025p18_SKP_02.jpg

習の積極的な視察は政策の実績をアピールする機会でもある。経済の中心・上海市内で地元住民と交流(2019年11月) XINHUA/AFLO

当時の輝きはほぼ失われた。今年の成長率は3%を下回る可能性があり、債務と倒産と失業が膨れ上がっている。

国際的評判も急降下した。香港では2019年頃に反体制派の活動が活発化し、今年2月の北京冬季五輪は中国の人権問題に対する批判が暗い影を落とすなかで開催された。

つまり、習の統治の下で中国の地盤沈下が大きく進んだのだ。

対外強硬路線で支持を獲得

中国では伝統的に、指導者を3つの基準に照らして評価してきた。その基準とは、「立徳」(道徳を確立すること)、「立功」(業績を上げること)、「立言」(思想を遺すこと)である。

政策面での数々の失敗は、習が「立功」の基準で不合格であることを意味する。

「立徳」に関しても大きな疑問符が付く。習は1985年から17年間にわたり、福建省で要職を歴任した。その時期に同省を舞台に中国史上最大とも言われる密輸事件が起き、百数十人もの党幹部や役人が有罪判決を受けた。ところが、習は目の前で起きていたはずの不正を全く知らなかったと言ってのけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中