最新記事

ウクライナ情勢

ロシア兵とウクライナ兵の「和解」壁画が大炎上!

Mural of Ukrainian and Russian Soldiers Sparks Fury: 'Highly Offensive'

2022年9月5日(月)15時16分
ブレンダン・コール

ルハンシク州で、身元不明のウクライナ兵士58人の遺体を埋葬した男性(7月12日) Alexander Ermochenko-REUTERS

<ウクライナにロシアの侵略を受け入れろと言うようなものだ、とウクライナ人は猛反発>

オーストラリア第2の都市メルボルンでビルの壁に描かれた壁画が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵略の現実を歪曲するものだとして激しい非難を浴びている。ロシア兵とウクライナ兵がハグしあっている姿が描かれているからだ。

作者であるアーティストのピーター・シートンはこの壁画を撮影した短い動画をインスタグラムに投稿。動画は爆発音に続きキノコ雲が湧き上がるアニメつきで、「ウクライナの人々に愛を。われわれが和平にたどり着き、この必要のない流血を終わらせることができますように」とのメッセージが添えられていた。

だがオーストラリアのウクライナ系団体の連合体である「オーストラリア・ウクライナ組織連合(AFUO)」は、この絵は侵略者と被害者が道義的に同じ立場にあるかのような誤った印象を与え、ロシアによる偽情報拡散を助長し、ウクライナに対して自国を破壊しようというロシアの試みを受け入れよと強いていると主張した。

ロシアと和解すれば核戦争回避できる?

AFUOのステファン・ロマニウ共同会長は、ロシア人兵士とウクライナ人兵士が和解すれば核戦争を食い止められるかのような描き方は「非常に不快だ」と述べた。

【画像】一見麗しいが、ウクライナ人にとって許し難い壁画

「事実は、あれと同じロシア兵たちがウクライナ人を殺しているのだ」とロマニウは本誌に述べた。

「作者が言わんとしていることは『団結し、和解しよう』だ。だが、それはロシア人が侵略者であり続ける限り起こりえない」

ロマニウによればAFUOは以前、シートンにウクライナの壁画の制作を持ちかけたことがあるが断られたという。

AFUOは2日にこの作品のことを知り、シートンに対し「あなたのしたことに強い嫌悪感を抱いている」と伝えたという。

ロマニウは、地元メルボルンのウクライナ人コミュニティが強く反発し、市当局に対して壁画の撤去を求めるロビー活動を行うだろうとの見方を示した。

本誌はメルボルン市議会とシートンにコメントを求めたが、回答は得られていない。

在オーストラリアのウクライナ大使を務めるバシル・ミロシニチェンコはツイッターに「(壁画は)全てのウクライナ人にとって完全に不快なもの」だと投稿。「作者はロシアによるウクライナ侵略について何も分かっていない」し、壁画は「すぐに消去されなければならない」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国中銀、ウォン安など金融安定リスクへの警戒必要=

ビジネス

米国との貿易協定、来年早々にも署名の可能性=インド

ビジネス

26年度予算案の想定金利3%程度で調整、29年ぶり

ワールド

メルセデス、ディーゼル排ガス不正で米州と和解 1.
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中