最新記事

医療

米医大で難しくなった中絶技術習得 最高裁判決で医療界に危機感

2022年8月21日(日)10時35分

こうした訓練はドラゴンフルーツやパパイヤを使って行われることが多く、一部の医師や中絶の権利擁護団体は、こうした訓練では実際の治療への備えが不十分ではないかと懸念を示している。

中絶権擁護団体、メディカル・ステューデント・フォー・チョイスのパメラ・メリット事務局長は「非常に優れた医学部ですら、現代医学教育を受けていない学生を卒業させている例があることをとても心配している」と言う。「妊婦の命を救うために治療する許可を得たとしても、実際には治療できないだろう」

一方で中絶反対派は、医学部や研修医制度が任意の中絶を行う方法を教えなくとも、女性の命を救うための緊急処置の教育が途絶えることはない、と主張している。

中絶反対団体、ステューデント・フォー・ライフ・オブ・アメリカの広報担当者、クリスティ・ハムリック氏は「中絶権擁護派は問題を抱えていない女性に向けて、誤った情報や脅しをかける戦術を用いている」と述べた。

中絶禁止になれば研修は州外で

シンシナティ大学医学部の大学院医学教育担当副学部長でACGMEのメンバーであるルイ・エジェ氏は、ほとんどの機関が研修医の州外研修を支援するよう期待していると話す。

しかし、少ない施設に多くの学生が殺到し、全員に実践的な訓練を受けさせるのに十分な患者がいなければ、支障が生じかねないと問題点を挙げた。

ミシガン大学では研修医の受け入れに備えて専門チームを設置した。だが、同チームを率いるリサ・ハリス教授(産婦人科)によると、州内の中絶を巡る法的状況は刻々と変化しており、ミシガン州が中絶を禁止した場合には研修医の州外研修を助ける手段も検討しているという。

(Rose Horowitch記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「金は関税の対象にならず」、懸念払しょく

ワールド

欧州首脳、米ロ首脳会談控え13日にトランプ氏と協議

ワールド

ゼレンスキー氏「ロシアに戦争終結の用意ない」、制裁

ワールド

ロ・ウクライナ、和平へ「領土交換」必要 プーチン氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 7
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 8
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中