最新記事

サウジアラビア

サウジ当局、あらゆる虹色のおもちゃを押収 「子供の同性愛を助長」

2022年6月30日(木)16時35分
青葉やまと

サウジアラビア・リヤドで、虹色を含む商品を手に取るサウジ商務省関係者 Photo: Saudi Ministry of Commerce

<同性同士の性行為に死刑を科すなど、厳しい取り締まりを行うサウジアラビア。虹色をあしらった商品が、「子供に有害」として店頭から強制撤去された>

サウジアラビア当局は6月、ショッピングモールなどの店舗から虹色の商品を大量に押収した。イスラム教の教えに反し、若い世代の同性愛を助長しているためだという。サウジ国営の放送局「アル・エフバリヤ」が報じた。

当局職員らは、首都リヤドとその近郊にあるショッピングモールなどで立ち入り調査を実施し、その場で対象商品の押収に踏み切った。子供用のおもちゃやアクセサリー類を中心に、クレヨンや筆箱など文具類、そしてスカートや帽子などの衣類を含め、虹色を含む広範な商品が回収された。同性愛や性的自認の不一致などLGBTQの人々は、虹色をシンボルとして採用している。

職員らは商品棚のあいだを歩き回り、虹色が少しでも入っている商品をみつけては片っ端から床に投げ捨て、店舗から没収している。タイムズ・オブ・イスラエル紙によるとサウジ商務省関係者は、「イスラムの教えと公序良俗に反し、若い世代の同性愛を助長する商品の確認のため巡回している」と説明している。

米CNNは、アル・エフバリヤ局の記者による現地リポートを取り上げている。記者は店頭で販売されている虹色の旗を「同性愛の旗」だとして指差し、子供たちに「有害なメッセージ」を放っていると主張した。虹色の旗はメッセージ性の強い例だが、ほか、淡いピンクに一部黄色とブルーを混ぜたポーチなど、直ちに同性愛を想起させない商品も多く押収されている。

同性愛が死刑のサウジ イスラム圏は称賛「よくやった」

欧米では同性愛の弾圧を廃止する機運が高まるなか、ムスリムの人々はこれと正反対の反応をみせている。ロンドンの拠点から中東関連のニュースを発信しているウェブサイト「ミドル・イースト・アイ」は、押収の様子を動画で報じた。視聴者層の大半を占めるとみられるムスリムの人々からは、肯定的なコメントが動画に寄せられた。

ある視聴者は「同性愛への偏見というわけではなく、ただ単に彼らの文化と宗教、そして社会において許容されていないだけだ。私もムスリムなので理解する。(サウジ商務省は)よくやった」とコメントした。別の視聴者は、この手の話題が欧米のニュースでは批判的に報じられがちである傾向に触れ、肯定的なコメントの溢れる同動画について「人間の善良な行いを人々が支持しており、みていて心地がいい」とのコメントを残している。

サウジアラビアを含め、イランやスーダンなど一部の国では、同性同士の性行為に最大で死刑が科される。ほか、湾岸諸国を中心に、アフリカ沿岸部からインドおよびミャンマーにかけての多くの国では、同性愛が違法とされている。昨年12月には隣国のカタールでも、小売店から虹色の子供のおもちゃが押収された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ガザ休戦交渉難航、ハマス代表団がカイロ離れる 7日

ワールド

米、イスラエルへ弾薬供与停止 戦闘開始後初=報道

ワールド

アングル:中国地方都市、財政ひっ迫で住宅購入補助金

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中