最新記事

裁判

ジョニー・デップ裁判で証言した私が体感した彼の本質

'I Testified in the Heard vs. Depp Trial. The Backlash Has Been Horrific'

2022年6月9日(木)18時59分
デービッド・スピーゲル(精神科医)

デップからDVを受けたと言う元妻ハード(左)を名誉毀損で訴えたデップ Jim Lo Scalzo/REUTERS

<アンバー・ハード側の証人として証言をした私は激しいバッシングを浴び、ジョニー・デップはファンのそうした行動を止めようともしなかった>

ジョニー・デップが元妻のアンバー・ハードを名誉毀損で訴えた裁判は6月1日に評決が下り、デップが勝訴したことを私はニュースで知った。

何よりもまずミズ・ハードにとっては非常に残念な結果だった。この裁判で、彼女が受けた支援はとうてい十分とは言えない。

私は30年の臨床経験を持つ精神科医で、医療過誤をめぐる裁判でも専門家として証言したことはあるが、メディアが大々的に取り上げるような裁判で証言を行なうのはこれが初めてだった。

ハード側の弁護団に専門家として証言するよう求められたのは、この裁判が始まった2019年で、およそ3年関わってきたことになり、その間に法廷で争われた事柄は知り抜いている。

証人になることを引き受けた段階では、この裁判は非公開で行われると思っていた。TVカメラもファンも法廷内には入れない。裁判所の外にはパパラッチがいるが、その程度のことなら大したことはない、と。

ハードは礼儀正しい女性

だが裁判の様子がテレビで全米に伝えられるようになると、にわかに雲行きが変わった。それでも証人を引き受けた以上、自分の務めを粛々と果たすのみ──そう自分に言い聞かせていた。

裁判の前に、私はオンライン会議アプリのズーム(Zoom)でハードに小一時間話を聞いた。証言を行なった5月23日には、休憩時間に彼女と2人でランチをとった。とても感じの良い、物柔らかで礼儀正しい女性という印象を受けた。

証言内容については何も心配してなかった。トラウマと薬物乱用は私の専門だし、裁判で争われた事実についても事前に十分調べていた。とはいえ反対尋問は勝手が違う。相手の出方が分からないので、万全な準備ができない。それでも予想外の質問をされることは覚悟していたが、心配だったのはテレビ報道だ。私の証言は全米に伝えられる。一般の人たちがどんな反応をするか予想もつかなかった。

証言を終えたら、ほかの人たちが証言を行なっている間に退廷するよう言われていた。裁判が続いている間は、傍聴人は席を立てないからだ。そのため裁判所を出るときには、誰も私の車を追いかけてこなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州金融業界向け重要通信技術提供者、EUがAWSな

ワールド

中国首相、ロシア大統領とモスクワで18日に会談=新

ビジネス

米政府系住宅金融2社の株式売却、短期的に不可能=ア

ワールド

MI5、中国スパイがヘッドハンター装い英議員に接触
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中