最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ軍、東部で苦戦し撤退の恐れも 外交交渉も進まず

2022年5月28日(土)12時08分
ロシア軍の攻撃を受け炎上するウクライナ東部の建物

ウクライナ東部のルガンスク州を含むドンバス地域で、ロシア軍が攻勢を強め、ウクライナ側の苦戦が明らかになっている。5月26日、ルガンスク州で撮影(2022 年 ロイター/Special Operations Forces Command/Handout via REUTERS)

ウクライナ東部のルガンスク州を含むドンバス地域で、ウクライナ軍が攻勢を強め、ウクライナ側の苦戦が明らかになっている。

ルガンスク州のガイダイ知事は27日、州の大半の地域がロシア軍の手に落ちる中、ウクライナ軍は兵士が捕虜になるのを避けるために、最後まで残っている州内の拠点から撤退せざるを得なくなる可能性があるとの見方を示した。

ウクライナ軍が撤退した場合、ロシアはルガンスク州とドネツク州の完全制圧に一歩近づくことになる。

ガイダイ知事によると、ロシア軍はルガンスク州の要衝セベロドネツク市を数日間包囲したのち、同市に侵入した。同市では建物の9割が損壊しているという。

ただガイダイ知事はテレグラムへの投稿で「ロシア軍は向こう数日間でルガンスク州を占領することはできない」とも述べた。

一方、ウクライナ東部の親ロシア派は27日、セベロドネツク市西方の鉄道拠点、ライマンを完全掌握したと表明した。ウクライナのゼレンスキー大統領の顧問を務めるオレクシー・アレストビッチ氏はソーシャルメディアに投稿した動画で「未検証のデータによると、われわれはライマンの町を失った」と述べ、これを確認した。

これらを受けて、ジョンソン英首相は27日、ロシアが東部ドンバス地方で緩慢ながらも明白な進展を遂げているとの認識を示した。

同首相はブルームバーグUKに対し「(ロシアは)少しずつ、ゆっくりとだが、残念ながら、明白な進展を遂げている。このため、われわれが引き続きウクライナ軍を支援することが極めて重要だ」と述べた。

外交交渉も継続してはいるものの、進展はほとんどみられていない。

オーストリアのネハンマー首相は27日、ロシアのプーチン大統領と45分間の電話会談を行った。ネハンマー首相によると、プーチン大統領はウクライナとの捕虜交換で協議する用意があると表明したものの、「実際にプーチン大統領に交渉する用意ができているかは複雑な問題」だとした。

その後、ロシア政府は声明で、プーチン大統領がウクライナはロシアとの和平交渉を「妨害している」と非難したことを明らかにした。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ米政権、日本のロシア産エネ輸入停止を期待=

ビジネス

焦点:過熱するAI相場、収益化への懸念で市場に警戒

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米ハイテク株高や高市トレード

ワールド

ハンガリー外相、EUのロシア産エネルギー輸入廃止を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中