最新記事

アメリカ外交

「台湾有事には軍事介入」 バイデンの発言は失言か、意図したものか

2022年5月24日(火)14時15分
バイデン米大統領

政治の世界では、物事の本質をあえて口にすると失敗するという格言がある。写真は同日、東京・迎賓館で記者会見に臨むバイデン米大統領。代表撮影(2022年 ロイター)

政治の世界では、物事の本質をあえて口にすると失敗するという格言がある。その意味で、バイデン米大統領が台湾問題で率直な発言をしたのはしくじりだ、というのが批判派の見方だ。

バイデン氏は大統領として初のアジア歴訪中の23日、中国が台湾に侵攻した場合、米国が軍事的に関与する考えを表明。台湾有事に米国がどう対応するかは「意図的に不透明にしておく」という長らく堅持してきた外交戦略と一線を画する姿勢を見せた。

もっともバイデン氏は、これまでも何度か即席で発した言葉で、個人的な気持ちとしては台湾防衛に傾いていることを示唆している。

長年の「あいまい戦略」放棄に賛成する人々の中からも、バイデン氏を批判する声が聞かれる。同氏が台湾に正式な軍事力提供を請け合わず、この問題をいたずらに紛糾させ、中国の行動意欲をかき立てる危険を冒しているという理屈からだ。

ただ、米シンクタンク・外交問題評議会のデービッド・サックス氏をはじめとする何人かの専門家は、バイデン氏が外交政策全般のベテランである事実や、発言の場の隣には日本の岸田文雄首相がいたこと、そしてこれがロシアによるウクライナ侵攻後だった点を踏まえると、決して失言をしたわけではないと分かるとみている。

サックス氏は「これは、ヘマではなかったと考えている」と言い切った。

残されたあいまいな部分

バイデン氏は、ある記者から中国が台湾に侵攻した際に米国が軍事的に関与するのかと聞かれ、「イエス」と返答。その後、ホワイトハウスとオースティン米国防長官はすかさず、米国の立場に変更はないと火消しに走った。

オバマ政権時代に米国の東アジア外交責任者を務めたダニエル・ラッセル氏は「バイデン氏は、中国による台湾への侵攻に米国が対応すべきだとの信念を持っていることは明らかにしている。彼があいまいにしているのは、具体的な対応方法と台湾防衛に関する米国のコミットメントの内容だ」と解説する。

バイデン氏は特に、軍事的関与が米軍の戦闘地域への派遣を意味するのかどうかについて、相当大きな解釈の余地を残したままだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット

ワールド

インドとパキスタン、停戦合意から一夜明け小康 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 8
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中