最新記事
宇宙

観測史上最大の彗星が確認される

2022年4月18日(月)17時30分
松岡由希子

観測史上最大の核を持つ長周期彗星が確認される  Credit: NASA / ESA / Man-To Hui (Macau University Of Science And Technology) / David Jewitt (UCLA) / Image Processing: Alyssa Pagan

<既知の彗星の約50倍大きく、直径は最大134キロと推定される観測史上最大の核を持つ長周期彗星が確認された>

「C/2014 UN271」は、南米チリのセロ・トロロ・汎米天文台でのダークエネルギーサーベイ(DES)の観測データから見つかった巨大な彗星だ。米ペンシルバニア大学の天文学者ペドロ・ベルナーディネッリ博士とゲイリー・バーンスティン教授が初めて発見したことから「ベルナーディネッリ・バーンスティン彗星」とも呼ばれ、研究がすすめられてきた。

既知の彗星の約50倍大きく、直径は最大134キロ

マカオ科技大学(MUST)、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)らの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の「広視野カメラ3」が2022年1月8日に撮影した画像5枚を用いてその大きさを計算し、「C/2014 UN271」が観測史上最大の核を持つ長周期彗星であることを確認した。

学術雑誌「アストフロフィジカルジャーナル・レターズ」で2022年4月12日に発表された研究論文によると、「C/2014 UN271」の核は既知の彗星の約50倍大きく、その直径は最大134キロと推定される。

n271_nucleuscomparison.jpg

観測史上最大の核を持つ長周期彗星 Credit: NASA / ESA / Man-To Hui (Macau University Of Science And Technology) / David Jewitt (UCLA) / Image Processing: Alyssa Pagan


「C/2014 UN271」の彗星核の周囲には「コマ」と呼ばれる星雲状のガスや塵が取り巻いている。そこで研究チームは、周囲の「コマ」をコンピュータモデル化して画像から「コマ」を差し引き、彗星核のみを分離した。さらに、これをチリ・アタカマ砂漠の「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)」の電波計測と比較することで、彗星核の直径と反射率を導き出した。

matuoka20220418a.jpg

(左)ハッブルのC/2014 UN271の画像。 (中央)彗星のコマのコンピューターモデル。 (右)モデル化されたコマが除去された彗星核

研究論文の共同著者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校の天文学者デビッド・ジューイット教授は「『C/2014 UN271』は太陽系のもっと遠くにある数多くの彗星のひとつにすぎない」とし、「『C/2014 UN271』はこれほど遠くても明るいため、大きい彗星であろうと常々考えていたが、今、それが確認された」と、この研究結果の意義を語っている。

楕円形の軌道を約300万年かけて周回

「C/2014 UN271」は、太陽系の外側を球殻状に取り巻く仮説上の巨大な天体群「オールトの雲」からやってきたとみられる。「オールトの雲」にある彗星は巨大な外惑星の重力によって数十億年前に太陽系の外へ放り出され、通過する星の重力によって軌道が乱されると太陽や惑星に向かって戻ってくる。

また、「C/2014 UN271」は楕円形の軌道を約300万年かけて周回し、その形状から100万年以上にわたってゆっくりと太陽へ接近してきたとみられる。時速2万2000マイル(約3万5405キロ)で移動し、2031年には太陽に最接近する見通しだが、太陽から10億マイル(約16億キロ)以内に近づくことはないという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の

ビジネス

アマゾン、豪データセンターに5年間で130億ドル投

ワールド

イラン世界最大級ガス田で一部生産停止、イスラエル攻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中