最新記事

G20

G20開催で苦境に立つ議長国インドネシア ロシア参加に賛否両論、圧力も

2022年4月13日(水)17時45分
大塚智彦
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領はロシアのプーチン大統領

この秋のG20でもインドネシアのジョコ・ウィドド大統領はロシアのプーチン大統領と笑顔で握手することができるのか? Sputnik Photo Agency / REUTERS

<プーチンと同じテーブルにつきたくないという西側各国の声にどう応えるのか?>

今年10月にバリ島で開催するG20首脳会議をめぐって議長国のインドネシアが苦しい立場となっている。

というのもロシアによるウクライナ軍事侵攻という予期せざる事態に国際社会は親ロシアと反ロシアに二分され、G20の今年の議長国であるインドネシアは、メンバー国であるロシアを招待して会議に参加させるべきか、招待を見送り会議参加を阻止するのか、選択を突きつけられている。反ロシアという立場の欧米などからは牽制や圧力が強まっており、インドネシア政府を苦境に立たせているのだ。

インドネシア外務省などはこれまでウクライナ情勢を受けても「全ての参加国を招待する」との立場を表明してロシアのプーチン大統領も招待、会議に参加するとの姿勢を明らかにしている。

欧米からの批判、中国は援護射撃

こうした議長国インドネシアの方針に欧州各国は「侵略者の参加は許されない」「殺人者と同じ会議の席に座ることはできない」などとロシア・プーチン大統領の参加に反対する立場を表明している。

米バイデン大統領は3月24日に「G20からロシアを排除すべきだ」と述べて反ロシアの立場を改めて表明した。

さらにイエレン米財務長官は4月6日に「首脳会議の他に開催されるG20関連の各種会議にロシアが参加するなら米は欠席する」と述べ、首脳会議以外の関連閣僚会議でも反ロシアの立場を強調した。

このような反ロシアの声が高まる一方で、ジャカルタにあるロシア大使館は3月2日に「プーチン大統領は予定通りG20に参加する意向である」との立場を表明。中国も「G20会議のどのメンバーも他のメンバーの出席を妨げることはできない」とコメントしてロシアへの援護射撃を行った。

G20は「米、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国」というG7加盟国に加えて「インドネシア、アルゼンチン、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、中国、インド、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコの12カ国と欧州連合・欧州中央銀行の1機関がメンバーとなっている。

このうちロシアに対して批判も擁護もしていない親ロシア派とされる南アフリカなどが「G20はあくまで各地域の代表国が経済問題や金融問題を話し合う会議である」などとしてロシア排除に否定的な見方を示しているとされる。

このようにG20という華々しい国際舞台での指導力発揮の場をどうするか、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領にとっては悩み深い事態に追い込まれているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 6
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 7
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中