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ウクライナ兵器支援、米国内の在庫払底に危機感 ジャベリンはすでに3分の1失う

2022年4月27日(水)13時00分
青葉やまと

見方によっては、在庫の3分の2量はまだ残っているとも取れるだろう。ただし戦略研は「しかしながら、軍事プランナーたちは神経を尖らせつつある模様だ」と指摘する。「ある時点でこれらの在庫は、戦争計画を遂行できるのだろうかと軍事計画者たちが疑問に思うほど少なくなるだろう。アメリカはそのポイントに近づきつつある可能性が高い」との見解だ。

アメリカがウクライナに供給しているその他の兵器については、例えば5000万発が供給された弾薬類についても、おおむね米在庫の1%程度と影響は軽微だ。ただし、対空ミサイルのスティンガーに関しては、推定在庫数8000発に対して2000発が提供されており、在庫の4分の1が失われた計算になる。

生産急ぎたいが......

在庫払底が現実味を増してきたとはいえ、ウクライナへの支援を停止することについては異論がある。戦略研のツイートに対してあるユーザーは、「では、我々は何のために在庫を確保するのか? ロシアがどこかを侵略するのに備えて? ロシア兵を討つため、在庫すべてをウクライナに提供するよりほかに、優れた使い道はない」と指摘した。

とはいえ、仮に在庫確保を優先せず全量供給に踏み切ったとしても、いずれにせよ将来いずれかの時点で既存生産分は底をつく。長期化するウクライナ戦線を支え続けるのであれば、ジャベリンおよびスティンガーの増産が急務だ。

ただし製造は複雑なサプライチェーンに依存しており、打開は簡単ではない。米国防総省の物資管理などを担う国防長官府は、米ワー・ゾーン誌が入手した声明のなかで、「こうした(ジャベリンやスティンガーなどの)システムは現在生産が行われているが、一部部品の納期が長く、下層サプライヤーの供給力にも制限があることから、期間あたりの生産量が限定的となっている」と述べ、生産体制の限界を認めた。

同誌は具体的な品目として、これら兵器に用いられる半導体やレアアースなどの供給網が主要な制限要因になっていると指摘する。

戦略研は「生産ラインは明らかに、海外向けの少数の売り上げのみによって維持されている」と述べ、現行の生産体制は非常に小規模であると述べている。急な増産は難しく、生産拡大には「24ヶ月以上を要する可能性がある」との見解だ。

国防生産法の発動が議論される

4月上旬には米上院軍事委員会の予算公聴会の場で、ジャベリンとスティンガーのウクライナへの供給体制を維持するため、国防生産法を適用すべきか否かが質された。同法は1950年に制定された法律であり、緊急時に産業界に対し、特定製品の優先的な生産を義務付ける。

同法の適用を視野に入れる議員は増えているものの、前述のとおり既存の生産設備が小規模であるため、実際の増産にどの程度貢献するかは不透明だ。米軍にとってジャベリンはすでに最新鋭の兵器とはいい難く、新たな生産設備への投資に見合わないとの議論もある。

さらに一部報道によると、米軍側の予算が不透明であるとの問題も出ている。ジャベリンは1発あたりの調達コストとして19万2772ドル(約2500万円)を要する。

ウクライナ軍の防衛戦を大きく支えるアメリカ製兵器だが、本国の在庫も無尽蔵ではない。防衛に不可欠な存在となるなか、生産の綱渡りが続きそうだ。

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