最新記事

ウクライナ情勢

ロシア、ウクライナ展開の軍を東部ドンバスに集中と表明 中国も距離置く動き

2022年3月26日(土)11時19分
ウクライナの兵士

ウクライナ軍が首都キエフ郊外の町奪還に向け攻勢を強める中、ロシアは25日、親ロシア派が実効支配するウクライナ東部ドンバス地域に集中すると表明し、ウクライナでの野心的な計画の縮小を示唆した。ウクライナで撮影(2022年 ロイター/Gleb Garanich)

ウクライナ軍が首都キエフ郊外の町奪還に向け攻勢を強める中、ロシアは25日、親ロシア派が実効支配するウクライナ東部ドンバス地域に集中すると表明し、ウクライナでの野心的な計画の縮小を示唆した。

25日は西側諸国の対ロ制裁が中国による投資に影響を与えていることが初めて明らかになった。

関係筋によると、中国国有の石油・ガス大手、中国石油化工(シノペック)グループが、ロシアの大規模な石油化学投資とガス販売事業に関する協議を打ち切ったという。

ロシアのウクライナ侵攻は1カ月に及んでいるが、ロシア軍はウクライナ軍の激しい抵抗にあい、主要都市を占領できていない。代わりにロシア軍は主要都市を砲撃し、住宅エリアを荒廃させており、ウクライナの人口4400万人のうち約4分の1が避難する事態となっている。

そのうち370万人以上が国外に退避。その半分は隣国ポーランドに向かっている。

訪欧中のバイデン米大統領は25日、ポーランドの南東部ジェシュフを訪れ、駐留する米軍部隊を激励。米兵士らと食事を共にし、「あなたたちは民主主義とロシアの新興財閥(オリガルヒ)との戦いの真っただ中にいる」と語った。

その後、ウクライナ避難民への人道援助に関する状況説明を受け、ドゥダ大統領らとの会合の冒頭で「人道的危機を直接自分の目で確認するためにポーランドを訪れた」と指摘。

「何十万人もの人々がロシア軍によって支援を断たれ、マリウポリのように包囲されている。まるでSF映画のような光景だ」と述べた。

こうした中、英国防省は25日、ウクライナが首都キエフの東35キロの地点まで町と防衛陣地を奪還したと表明。ロシア軍が補給路の不足で後退しているという。

一方、ロシア国防省は25日、ウクライナにおける「軍事作戦」の第一段階はほぼ完了したとし、ウクライナ東部ドンバス地域の完全「解放」に焦点を当てると発表。ロシアがウクライナの激しい抵抗に直面する中、より限定された目標に切り替えている可能性を示唆した。

また、ウクライナの戦闘でこれまでにロシア軍の死者は1351人、負傷者は3825人になったと発表した。その上で、プーチン大統領が設定した目標を達成するまで、「作戦」は続けられるとした。

ウクライナ側は1万5000人のロシア軍人が死亡したと発表している。

ロシア軍の砲撃で最も大きな打撃を受けた南部マリウポリの地元当局は25日、16日の劇場への爆撃に伴う死者数を確定することはまだ不可能だが、「目撃者の情報によると、ロシア軍用機による爆撃の結果、マリウポリの劇場で約300人が死亡した」と明かした。

和平交渉に関しても大きな進展は見られていない。

ウクライナのクレバ外相はフェイスブックへの投稿で、ロシアとの和平交渉は困難であるとし、6件の重要課題のうち4件で解決に向け進展があったとの報道を否定。「ウクライナの代表団は強硬な立場をとっており、要求を諦めない。われわれはまず停戦、安全保障、ウクライナの領土保全について主張する」とした。

一方、ロシアとウクライナの和平交渉でロシア側を代表するメジンスキー大統領補佐官は25日、二次的な問題については双方に歩み寄りが見られる一方、重要な問題での進展は限られているという見解を示した。

また、ロシアのプーチン大統領は25日、西側諸国はチャイコフスキーやショスタコービッチといった大作曲家を含むロシア文化全般を拒否しようとしていると批判した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協

ワールド

トランプ氏、民主6議員を「反逆者」と非難 軍に違法

ビジネス

米9月中古住宅販売、1.2%増の410万戸 住宅金

ワールド

中ロ、ミサイル防衛と「戦略安定」巡り協議 協力強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中