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ウクライナ行きに備えるシリアの「傭兵」:ただ混乱をもたらす欧米諸国の人道介入

2022年3月9日(水)17時15分
青山弘之(東京外国語大学教授)

また「トルコのディープ・ステートは、CIAの要請を受け、戦闘員を教練し、シリアからウクライナに派遣しようとしている...。トルコはシャーム解放機構と連携し、戦闘員のウクライナへの派遣を完全に統轄している」と断じた。


米国が対ロシア戦に参加させるためイスラーム国を教練?!

また、ロシア対外情報庁は3月4日に声明を出し、米国が違法に部隊を駐留させているヒムス県南東部のタンフ国境通行所の基地で、イスラーム国のメンバーを軍事教練し、ウクライナに派遣し、ドンバス地方での戦闘に参加させようとしていると発表した。

声明の概要は以下の通り。

「米国は2021年末、ロシアやCIS諸国出身のダーイシュのテロリスト数十人をあるシリア民主軍(米国が支援するクルド民族主義勢力を主体とする民兵)の刑務所から釈放し、米国が掌握しているタンフ国境通行所基地に移送され、彼らはドンバス地方を中心に破壊工作やテロを実行する手法について特別な訓練を受けた。
 米CIAと米特殊部軍司令部は、中等やアフリカ諸国に新たなダーイシュの部隊を作り出そうとしてきた。彼らは、NATOの諜報機関の支援を受け、隣国ポーランドを経由してウクライナに入り、テロ破壊活動に参加するために移送されることが決定されている。」

これに関しては、タンフ国境通行所一帯地域で米軍の支援を受けて活動している反体制武装集団の一つ革命特殊任務軍が3月5日に声明を出し、「事実無根」と否定した。

トルコによる「傭兵」募集

真偽は定かではないが、ロシアのメディアは報道を続けた。
RIAノーヴォスチ通信は3月5日、ロシア軍筋の話として、ウクライナの諜報機関がトルコの諜報機関とともにシリア北部で活動している「テロリスト」をウクライナでのロシア軍との戦闘に参加させるための準備を進めていたと伝えた。

同筋によると、ウクライナ軍治安機関の要員3人が、トルコの諜報機関の士官3人とともに2月4日、トルコ占領下のアレッポ県北部のアフリーン市やアアザーズ市を訪れ、同地の自由シリア軍の拠点を訪問、幹部らと会談し、戦闘員のウクライナへの派遣の可能性について議論し、秘密会合を継続することで合意した。

スプートニク・ニュース(アラビア語版)も同日、この訪問で、第一陣として戦闘員500人を必要が生じた場合にウクライナに派遣することが合意されたと伝えた。

スプートニク・ニュース(アラビア語版)はまた、この訪問を受けて、シリア国民軍が「傭兵」を募集するための徴兵事務所を開設したと報じた。

それによると、募集を行っているのは、ハムザ師団、シャーム軍団、スライマーン・シャー師団、東部自由人運動など「トルコマン系の武装集団」で、アレッポ県のアフリーン市、アアザーズ市、ジャラーブルス市、ラーイー村、ラッカ県のタッル・アブヤド市、ハサカ県のラアス・アイン市などに徴兵事務所を設置したという。

ハムザ師団、シャーム軍団、スライマーン・シャー師団は、トルコがリビアやアゼルバイジャンに派遣した武装集団。一方、東部自由人運動には、多くのイスラーム国元メンバーが参加している。

傭兵には月収5,000ユーロ(約63万円)もの大金が支給されるという。

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