最新記事

ウクライナ危機

ロシア「暗殺リストを作成」ウクライナ侵攻後、反体制派やLGBTなど標的に

2022年2月21日(月)13時55分
エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)、ロビー・グラマー(同)、ジャック・デッチ(同)
ウクライナのゼレンスキー大統領

「反ロシア派」筆頭はウクライナのゼレンスキー大統領 Denis Balibouse-REUTERS

<米関係筋によると、ロシアは侵攻後に拘束または暗殺の標的にするリストを作成している。武力攻撃の一方、内部対立を作り出し、反対分子を排除するのは典型的なロシアの流儀だ>

アメリカは、ロシアがウクライナに侵攻した場合、主要な政敵や反腐敗活動家、亡命中のベラルーシやロシアの反体制派を「標的」にする可能性があるとの情報を入手した。

バイデン米大統領は2月18日、早ければ数日中にも軍事侵攻が始まる可能性があると警告している。

米情報機関に近い4人の関係筋によると、ロシアはウクライナ侵攻時に拘束または暗殺の標的にするため、同国の政治家や有力者のリストを作成したという。

ある米政府当局者は匿名を条件に、アメリカはウクライナの特定グループに対し脅威に関する情報の機密レベルを引き下げ、同国政府や近隣諸国と共有できるようにしたと述べた。

「ロシアは脅迫と抑圧を通じて協力を強制しようとするだろう」と、別の米政府当局者は匿名を条件に語った。

「過去のロシアの作戦には、標的の殺害、誘拐・強制的な失踪、拘束、拷問が含まれていた。こうした行為の標的にされるのはロシアの行動に反対する人々──ウクライナに亡命中のロシアやベラルーシの反体制派、ジャーナリストや反腐敗活動家、宗教的・民族的少数派やLGBTのような弱者だろう」

標的リストには、ロシアの計画に反対する可能性がある全ての人物が含まれているようだ。

ファイブアイズ(米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国で構成される機密情報を共有する枠組み)の情報機関は、ロシア連邦保安局(FSB)やロシア軍参謀本部情報総局(GRU)が標的リストや殺害リストを作成している事実も把握している。

武力で軍事目標を制圧する一方、特殊工作員が内部対立を作り出し、情報工作員は相手国に潜入して反対分子を排除する──こうしたやり方は典型的なロシアの流儀だと、ある米議会スタッフは匿名を条件に言った。

ブリンケン米国務長官は17日の国連安全保障理事会で、ロシアによるウクライナ侵攻の想定シナリオに言及した。

「ロシアが計画しているのは通常兵器による攻撃だけではない。ロシアがウクライナの特定グループを標的にすることを示唆する情報がある」

イギリスの防衛シンクタンク、王立統合軍事研究所(RUSI)が2月15日に発表した報告書は、ウクライナ情報機関の高官数人への聞き取り調査に基づき、ロシアの情報機関はウクライナの地方政府に広く浸透し、侵攻時に地方政府の指揮を任せられる人物のネットワークを構築し始めていると主張する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中