最新記事

北京五輪

まさに「人工雪」の祭典! 北京五輪の会場周辺「衛星写真」が捉えた現実

Stunning Satellite Image Shows The Reality Behind China's 'Artificial' Winter Games

2022年2月12日(土)15時17分
ミーラ・スレシュ
北京五輪スキー

Christian Hartmann-REUTERS

<そもそも雪が少ない地域で冬季五輪を開催したため、初の「100%人工雪」五輪に。選手からは危険性を訴える声もあがる>

連日、熱戦が繰り広げられている北京冬季五輪だが、その舞台は中国が国の威信をかけて造り出した「人工雪による白銀の世界」。その実態が、NASAの衛星写真からも明らかになった。

地球観測衛星「ランドサット8号」から届いた画像には、北京の北西部に位置する延慶県張山営の西大荘科村Xiaohaituo Mountainエリアが写っている。ここはボブスレーやスケルトン、リュージュ、アルペンスキーなど、雪や氷でできた長い走路を必要とする滑走競技が行われる会場だ。

しかしNASAの報告書によると、この地域は2月には平均3.3センチしか雪が積もらないという。

そこで中国は、8300万ドルの費用を投じて400台近い人工降雪機を稼働。これにより、史上初となる「実質的に100%人工雪」の冬季五輪が開催されることとなったのだ。Time誌によれば、使用された人工降雪機のほとんどはイタリアの企業TechnoAlpin製のものだったという。

人工雪の使用は、環境保護論者からも五輪出場選手からも激しい反発を招いている。習近平は今回の冬季五輪について、すべての会場で再生可能エネルギーを使用するなど「グリーン」な五輪になると約束した。だが、平均気温が氷点下にならない都市で冬季五輪を開催することや、この地域の降水量が少ないことについて懸念の声が上がっていた。

選手からは危険性を訴える声が

「100%人工雪に頼るということは、気候的にふさわしくない土地に五輪がやってきたことを意味している」と、スポーツ環境学者マデリン・オアーはTimeに語っている。

多くの選手たちからも、人工雪の上で競技を行うのは危険だという意見が出ている。エストニアのバイアスロン選手ヨハンナ・タリハームはCBSスポーツに対し、人工雪は氷が多くなるためスピードが出すぎて危険だと指摘した。「コース外に飛び出してしまった場合、柔らかい雪だまりではなく岩や泥の硬い地面となるので痛い目を見ることになる」

アメリカのスキーチームでクロスカントリーのヘッドコーチを務めるクリス・グローバーも同じ意見だ。「本当に岩のように硬いところもあり、転倒すればコンクリートの上で転倒したように感じる。自然の雪の環境よりも少し危険になるはずだ」と、カナダメディアのグローブ・アンド・メールに語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国、和平合意迫るためウクライナに圧力 情報・武器

ビジネス

米FRB、インフレリスクなく「短期的に」利下げ可能

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 9
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中