最新記事

オミクロン株

初対面の人の家でロックダウンも...超厳戒態勢で、中国は五輪を成功させられるか

2022年1月18日(火)18時23分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
天津PCR検査

天津で2回目の大規模PCR検査に並ぶ人々(1月12日) CHINA DAILYーREUTERS

<ワクチン接種済みでも関係なく感染者が急増し始めた中国だが、ロックダウンと大規模PCR検査で五輪の成功という難題をクリアできるか>

中国北部の大都市・天津は(この国の厳格な基準では)深刻な新型コロナウイルスの感染拡大を受け、部分的ロックダウン(都市封鎖)に入った。当局は市内の多くの部分を閉鎖。旅行、集会、学校などを制限している。

1月12日段階で、市内で確認された感染者は137人。少なくとも2人は感染力の強いオミクロン株に感染していた。この変異株の市中感染を当局が公式に認めたのは初めてだ。

今のところ感染者は、大部分が南部の津南地区に集中している。今後、市中心部での感染が確認されれば、より徹底したロックダウンが行われる可能性が高い。

天津で確認された感染者の大半はワクチン接種済みだ。オミクロン株にはワクチンの防御を擦り抜ける能力があるため、感染者数は想定以上に多いかもしれない。

ただし、ワクチンが感染爆発に歯止めをかけている可能性もある。中国製ワクチンは欧米のmRNAワクチンほどではないが、重症化や死亡を効果的に防ぐことができる。当局はブースター接種用ワクチンを大量に配布しており、昨年12月は1億2050万回分、1月は少なくとも3億3100万回分を配った。

天津から北京まで高速鉄道で30分

天津と首都・北京との距離の近さは、政治指導者の重大関心事だ。中国の基準では両都市は隣同士であり、高速鉄道を使えば30分で移動できる。2月4日に冬季五輪の開幕を控えた北京にとっては、憂慮すべき状況だ。天津では現在、住民の市外への移動が制限されている。

中国の新型コロナ対策の柱は、他国では考えられないほどの大規模検査だ。天津では既に全市民1500万人の大半がPCR検査を受けた。筆者の友人たちによると、寒い冬の午前3時から検査を実施した地区もあったという。さらに市当局は、全市民を対象に2度目の検査を開始した。

中国の検査体制は驚異的だが、新型コロナの感染拡大に関する情報発信はそうでもない。いまだに中国の研究者は、冷凍食品を介して外国からウイルスが広まったというプロパガンダを主張し続けている。国外の専門家はほとんどがあり得ないと考えているのに、だ。

昨年、中国に派遣されたWHO(世界保健機関)の調査団は、冷凍保存された感染動物の肉が最初期の流行に一役買った可能性を認めたが、冷凍食品が感染を媒介するという説は支持しなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:欧州への不法移民20%減少、対策強化でも

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ停戦合意至らす トランプ氏「非

ワールド

トランプ氏「今すぐ検討必要ない」、中国への2次関税

ワールド

プーチン氏との会談は「10点満点」、トランプ大統領
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 5
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中