最新記事

パンデミック

北京冬季五輪の「バブル方式」、オミクロン株出現で破裂の危機

2022年1月7日(金)11時18分
北京冬季五輪のシンボルと、防護服を着た人

中国政府は2月の北京冬季五輪で、選手や関係者を外部と接触させない「バブル方式」を徹底する方針だ。写真は五輪のシンボルと、防護服を着た人。北京で昨年12月30日撮影(2022年 ロイター/Thomas Peter)

中国政府は2月の北京冬季五輪で、選手や関係者を外部と接触させない「バブル方式」を徹底する方針だ。しかし、感染力の強い新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が出現し、こうした取り組みは厳しい試練にさらされそうだ。

中国では感染経路の徹底的な追跡、標的を絞った厳しいロックダウン(都市封鎖)、海外からの渡航者の大幅な落ち込みを伴う旅行制限など「感染ゼロ」政策が奏功。新型コロナは2年前の武漢での初の感染確認以来、おおむね抑え込みに成功してきた。オミクロン株の感染確認数も一握りにとどまっている。

だが、2月4日に開幕する北京五輪では海外から2000人余りの選手が入国するほか、2万5000人に上る大会関係者は大半が外国からの入国となる。大会組織委は選手や関係者のうち、どの程度の人数が「バブル」内に入るのか公表していない。

大会組織委の広報担当者は昨年12月30日、「冬季五輪・パラリンピックを安全かつスケジュール通りに行うことは可能だ」と述べ、感染防止策に自信を示した。

大会が開かれる北京と河北省張家口市の規制は、昨夏の東京五輪よりもはるかに厳しい。

計画の中核を構成するのが、選手や大会関係者を国内居住者と物理的に隔てる徹底的なバブル方式。海外からの渡航者は専用機を使って直接バブル内に入り、直接出て行く。

デルタ株の感染者数が世界的に急増していたタイミングで開かれた東京五輪でも、厳しいバブル方式が導入された。ただ、報道関係者やボランティアなど国内居住者はバブルとの出入りが自由で、海外からの入国者の一部も14日間の隔離後で複数回の検査で陰性の結果が出ればバブルを出ることができた。

ところが、これまでの変異株よりもはるかに感染力が強いとみられるオミクロン株の発生で、世界の新型コロナ感染者数は記録的な水準に上昇し、スポーツ大会のスケジュールは混乱している。

北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)は、リーグ戦の中止が相次いだことを理由に北京五輪への選手派遣を取りやめると発表。カナダ五輪委の委員長は12月31日、北京五輪が予定通り開催できるか懸念を強めていると述べた。

ロンドン大学の感染症専門家、アイリーン・ピーターソン教授はオミクロン株について「私はときどき短距離走者と呼んでいる。とにかく感染力が強く、感染速度が速い」と話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

対イラン国連制裁、月内に復活の公算=仏大統領

ビジネス

マイクロソフト、ウィスコンシン州に2つ目のAIデー

ワールド

米年末商戦、増収率は3.6%に鈍化へ=マスターカー

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、最高値更新 足元は4万5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中