最新記事

アメリカ社会

電車内のレイプを米通勤客は見て見ぬふり それどころかスマホ撮影も

Bystanders Who Possibly Recorded Woman's Rape on Commuter Train Could Face Charges

2021年10月20日(水)16時48分
ゾーエ・ストロズースキ
記者と話す警官

警察によれば、通勤電車内で女性がレイプされているとき、乗客からは通報もなかった Associated Press-YouTube

<現場にいた複数の乗客は、犯人を制圧できないまでも、通報ぐらいはできたはずだった。警官が呆れる無関心ぶり>

ペンシルベニア州フィラデルフィア郊外を走る通勤電車の車内で10月13日、男が女性に性的暴行を加える事件が発生した。車内には他の乗客もいたのに誰も止めに入らたなかった、という警察の話が当初、コミュニティーに大きな衝撃をもたらした。

だがその後に警察が明かした事実もっとひどかった。乗客のなかには、スマホで犯行を撮影していた者までいたというのだ。それらの乗客も告発されるかもしれないと、事件発生地域を管轄するアッパー・ダービー郡区の警察本部長は語った。


当局の発表によれば、犯行は40分以上に渡って行われ、犯人は強制性交などの容疑で逮捕されている。

ティモシー・ベルンハルト警視によると、車内の監視カメラの映像には他の乗客たちの姿もあったが、犯行を止める様子はなかった。ベルンハルトは何もしなかった乗客を非難し、誰かが「何かをすべきだった」と語った。

警察は、今回の性的嫌がらせと強制性交を目撃した乗客は、誰一人として警察にも通報しなかったと考えている。まずは、暴行の現場をスマホ撮影していた乗客を捜査している。傍観者たちを起訴するかどうかは、最終的には地元デラウェア郡地方検事局が決定する、とAP通信は伝えた。

「私たちが望むのは、誰もが犯罪に怒りを感じ、嫌悪感を抱き、公共交通機関をより安全なものにしようとすることだ」と、この路線を運行する南東ペンシルベニア交通局(SEPTA)の交通警察署長トーマス・J・ネステル3世は述べた。

何もしないのは例外的

AP通信による事件の詳細は以下の通り。

ネステルは18日の記者会見で、犯人の男は、電車が24以上の駅を通過する間、女性に嫌がらせと痴漢行為を続け、最終的にレイプしたと語った。

犯人の男と被害者の女性は10月13日の夜、ノースフィラデルフィアの同じ駅から電車に乗った。警察が男を女性から引き離したのは、この路線の終着駅だった。交通警察官は交通局職員から通報を受けて約3分以内に駆け付けた、と当局は述べた。

逮捕記録によれば、犯人の名はフィストン・ノイ(35歳)。強制性交と関連する複数の罪に問われている。

逮捕されたノイの宣誓供述書には、約40分の犯行の間、女性が繰り返しノイを押しのけようとしていたことを含めて、暴行についての詳細が記述されている。

ネステルは、この事件の目撃者の人数を明らかにしなかった。宣誓供述書にも、40分間の犯行の間、車内に何人の乗客がいたかは記載されていない。当局は車内の監視カメラの映像を公開していない。

「言えるのは、この女性が暴行されている現場に、人々が携帯電話のカメラを向けていたということだ」と、ネステルは言う。

性的暴力の防止を研究しているジョン・ジェイ刑事司法大学の心理学教授エリザベス・ジェリックは、その場に居合わせた人々には、物理的に止めに入ることには恐怖を感じたとしても、警察に通報することはできたはずだと言う。「事件の映像をもとにした最近の研究では、かなりひどい状況の場合、90%のケースで目撃者が行動を起こした。だから今回の事件で、誰もこの女性を助けるために行動しなかったことは、例外的といえる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは155円半ば、早朝急落後も介入警戒

ビジネス

日経平均は小幅続落、連休前でポジション調整 底堅さ

ビジネス

丸紅、発行済み株式の2.3%・500億円上限に自社

ワールド

韓国当局、企業価値向上プログラムで指針案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中