最新記事

台湾

先例はAPEC、WTO... 台湾のTPP加盟を実現させる秘策

2021年9月27日(月)16時35分
シャノン・ティエジー
台湾の蔡英文総統

多くの難題を退けて、蔡英文総統はTPP参加へ道筋をつけられるか AP/AFLO

<中国が激怒しているが、台湾にも希望はある。日本などTPP構成国が中国側に、台湾との同時加盟という条件を突き付ける可能性もある。一方、いかなる条件でも中国が台湾の加入を認めない可能性もある>

台湾は9月22日、日本など11カ国によるTPP(環太平洋連携協定)への加入を申請した。16日に加入申請した中国を牽制する動きだ。

台湾は中国よりも多くの点で、TPPの参加資格を満たしている。

TPPは労働者の権利や環境保護、政府補助金による国内産業の優遇の撤廃など、高いレベルの自由化を加入基準として設けている。台湾は米ヘリテージ財団による「経済自由度」指数で世界6位だが、中国は107位だ(TPP参加国の平均順位は31位)。

台湾の王美花(ワン・メイホア)経済部長(経済相)はこの点に触れて、中国がTPPの「厳しい基準を満たしているかは疑問」だと述べた。「中国は今も経済への不当な介入を繰り返し......正当な理由なく輸入を禁じている」とも指摘。

実際、台湾自身がこうした政治的介入の被害を受けている。

台湾は以前からTPP加入の意向を表明しており、アメリカも強く支持してきた。しかし今は、そのアメリカがTPPを離脱している。こうなると加入のハードルは高い。

それでも台湾メディアによれば、台湾は既に加盟国と水面下の交渉を始めている。加入に必要な法制の見直しも終えており、「必要な法改正の用意もある」(王経済部長)という。

台湾にとって一番の障壁は、中国の反対で制限されているその国際的地位だろう。

中国は台湾の国際社会への参加にとにかく反対してきた。「台湾独立を画策する分離主義者に誤ったサインを送る」というのが、その決まり文句だ。今回も中国外務省の趙立堅(チャオ・リーチエン)報道官が台湾の参加に「断固反対」だと息巻いている。

だが台湾にも希望はある。

例えばAPEC(アジア太平洋経済協力会議)には、台湾は「チャイニーズ・タイペイ」の名で加盟している。

これはAPECが国ではなく「エコノミー」の集まりと規定されているからだ。参加単位が「国」である場合、中国は台湾の参加を絶対に認めないが、「国」以外なら容認する可能性がある。

WTO(世界貿易機関)の場合、台湾は香港やマカオと並ぶ「独立関税地域」として加盟を認められた。

台湾は中国よりもはるか以前に加盟基準を整えていたが、台湾に先んじられるのを嫌った中国が政治力で加入を阻んでいた。結果的に、アメリカが折れて中国の加盟を認め、その後に台湾の加盟も許された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EUと南アが重要鉱物に関する協力協定、多国間主義維

ビジネス

BNPパリバ、中核的自己資本比率目標引き上げ 27

ビジネス

米アボット、がん検査エグザクトサイエンスを230億

ワールド

中国、仏製戦闘機ラファールの販売妨害で偽情報作戦=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 8
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中