最新記事

日本政治

今回の総裁選からは、自民党が古い派閥政治と決別する希望が見える

The LDP Restoration

2021年9月22日(水)18時07分
シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)
自民党総裁選

衆院選を間近に控えての総裁選は「党の顔」選びの側面が大きくなっている Kimimasa MayamaーPoolーREUTERS

<派閥ボスの談合で物事が決まる密室支配と、続く不祥事に国民も自民若手もうんざり。自民党は改革政党に生まれ変われるか>

この夏日本では、新型コロナウイルスの感染拡大、さらには東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて、世論の不満が募る一方だった。国民の不満は各種世論調査や地方選挙の結果にはっきりと表れ、菅義偉首相率いる現政権の支持率は急落した。

だが、多くの人にとって予想外だったのは与党・自民党内で不満が噴出したことだ。菅も二階俊博幹事長も、不満が沸点に達していることに気付かなかった。

菅の任期満了に伴い自民党の次期総裁を決める選挙が告示された今、党内の不満と対立はさらに顕著になっている。安倍晋三前首相が所属する最大派閥の細田派は支持候補を一本化できず、安倍政権で外相を務めた岸田文雄と安倍のイデオロギーを受け継ぐ高市早苗前総務相の両方を推すことにした。

前回の総裁選に出馬した石破茂元幹事長と若手のリーダー的存在の小泉進次郎環境相は今回、河野太郎行革担当相を支持すると表明している。現政権でコロナワクチンの接種推進の旗振り役を務める河野は、世論調査で他候補を圧倒的にリードしている。

コメンテーターがこの3人の三つどもえの戦いを語りだした矢先、4人目の候補が名乗りを上げた。ジェンダーと家族政策で党を引っ張ってきた野田聖子幹事長代行だ。

4人の候補は4回の討論会を通じて、それぞれ独自の日本の未来像を描き、われこそは自民党総裁、ひいては日本の首相にふさわしいビジョンの持ち主であると党員にアピールすることになる。

くすぶる五輪強行への怒り

一方、実施時期が注視されていた衆院選は11月初めに行われる見通しだ。国政選挙が控えていることが総裁選をめぐる党内の緊張感の底流にある。菅首相の支持率急落が物語るのは、後手後手に回ったコロナ対策への不満や、1年延期されたオリンピックとパラリンピックの強行に対する怒りが有権者の間に広くくすぶっていることだ。

とはいえ総裁選を左右するのはコロナと五輪だけではない。次期衆院選はポスト安倍の初めての国政選挙で、自民党の苦戦が予想されている。安倍は政権復帰した2012年以降、衆参それぞれ3回、計6回の国政選挙で勝利し、公明党と共に衆参両院で過半数議席を維持。8年近い在任中、国会対策に手を焼くことはほとんどなかった。

だが安倍政権は一連の政治的スキャンダルにたたられた。安倍自身が権力と金の不適切な使用をめぐり野党の厳しい追及を受けたが、(「桜を見る会」以外は)前首相に対する正式な捜査は行われなかった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英外相、ウクライナ訪問 「必要な限り」支援継続を確

ビジネス

米国株式市場=上昇、FOMC消化中 決算・指標を材

ビジネス

NY外為市場=円上昇、一時153円台 前日には介入

ワールド

ロシア抜きのウクライナ和平協議、「意味ない」=ロ大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中