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今こそ賢人クーパーの教えに従うべき...コロナ後の経済回復に不可欠なもの

LISTEN TO COOPER’S ADVICE

2021年7月7日(水)22時49分
浜田宏一(元内閣官房参与、米エール大学名誉教授)

16年以降、日本のマネタリーベースと日本円・米ドルの為替レートの関係は低下し、日銀の金融緩和策の効果も弱まった。しかし、今でも金融政策の相互依存の関係は変わらない。

日本はリーマン・ショックの苦い経験から教訓を学んでいた。そのためコロナ禍でアメリカが金融緩和を強化すると、日銀もこれに続いて円高を防いでいる。

確かに、超低金利やマイナス金利が続く現状では、マネタリーベースと為替レートの関連は、通常どおりには機能しない。このため、金融緩和だけで強固で持続的な経済回復を実現できるとは言えない。しかし金融緩和は、日本が取り残されないためには不可欠なのである。

今の課題は、今日の世界的な経済の相互依存の影響を考慮した回復戦略を考え出すことだ。現在の長期的な需要低迷の時代には、金融政策と財政政策の境界線が曖昧になっている。大きなインフレでもない限り、中央銀行は金融緩和策を継続するのが得策だ。それとともに、各国の財政政策の国際協調も必要である。世界は今こそクーパーのアドバイスに従う必要があるのだ。

KOICHI_HAMADA_profile.jpg[著者]浜田宏一 KOICHI HAMADA
経済学博士、米エール大学名誉教授。内閣府経済社会総合研究所長などを経て、安倍内閣で情報提供や助言を行う内閣官房参与を務めた。近著に『21世紀の経済政策』(講談社刊)。

©Project Syndicate

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