最新記事

女性蔑視

女子学生を美醜でランク付けした中国「アート」作品のひどい言い分

Museum Removes 'Uglier & Uglier' Exhibit That Ranked Women's Looks

2021年6月21日(月)16時50分
エマ・メイヤー
女子学生のイメージ

「どの女性も平等にモノ扱いした」からいいのだ、と問題のアーティストは語ったという(写真はイメージ) FilippoBacci-iStock

<言論の自由がないのにこれはいいの?と思うような問題作品を中国の権威ある美術館が展示した。しかもこのアーティストは確信犯だ>

中国・上海の現代アート専門の美術館が、ある男性アーティストの映像作品を展示したことで厳しい批判にさらされている。撮影された女性たちを「美しさ」の順にランク付けする作品だったからだ。

問題となったのは宋拓(ソン・ター)の作品「校花」で、「Uglier and Uglier(もっと醜く)」という英語タイトルが付いている。2013年にとある大学の構内で通りがかった女子学生たちを撮影し、宋の目から見て美しい順に並べて7時間の動画に編集したものだ。

この作品が、中国でもっとも権威のある美術館の1つである現代美術ターミナル(OCAT)上海館で展示された。

宋は作品についてこう解説していた。「もしキャンパスの女王を見たいなら、できるだけ早い時間に美術館にきたほうがいい。時間が遅くなると、生き地獄と化す」

だがOCAT上海館がこの展示の宣伝を大手ソーシャルメディアの微信(ウェイシン)に投稿したところ、世間から寄せられた反応は厳しいものだった。投稿は削除したものの炎上は止められなかったと、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは言う。

美醜による分類やランク付けへの異常なこだわり

ソーシャルメディアでは展示を批判するコメントが相次いだ。「この美術作品は侮辱的なだけでなく、個人の肖像権を侵害している。女性たちは自分が撮影されているとは知る由もなかった」という人もいれば、宋は芸術家どころか人間と呼ぶにも値しないと断じる人もいた。この現代社会において「どうやったら平気な顔で恥ずかしげもなく女性をモノ扱いできるんだ?」というコメントもあった。

OCAT上海館は18日に謝罪文を中国版ツイッターの新浪微博(シンランウェイボー)に投稿し、作品をすぐに撤去すると約束した。そして「批判を受けてから、われわれはこの美術作品の内容とアーティストの解説について再吟味した。(そして)この作品が女性を蔑視しており、撮影方法にも問題があるということが判明した」と述べた。

また同館は「多様性を支持する美術館として、われわれはこれを戒めと受け止め、サービス改善に努めるとともに、あらゆる人を共感を持って扱っていく」とも述べた。

宋の作品が批判を浴びたのはこれが初めてではない。2013年9月に武漢でファッションショー形式で行われたライブイベントは、44人の女性ボランティアが、宋が美しいと思う順番に舞台を歩くという趣向だった。つまり彼から見て最も魅力に欠ける女性が最後に登場することになる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中