最新記事

ベトナム変異株

ベトナムで新たに「非常に危険な」変異ウイルスを確認

'Very Dangerous' COVID Variant Found in Vietnam Highly Transmissible, Replicates Quickly

2021年5月31日(月)16時24分
ナタリー・コラロッシ
ベトナムの首都ハノイで体温チェックを受ける人々

ベトナムの首都ハノイで体温チェックを受ける人々(5月23日) Thanh Hue-REUTERS

<インド型とイギリス型の性質を合わせ持ち、伝播性が高いのが特徴。ベトナムの急速な感染拡大の一因とも>

ベトナム政府は5月29日、「非常に危険な」新型コロナウイルスの変異株を確認したと明らかにした。イギリス型変異株とインド型変異株が合わさったような特徴をもつウイルスだという。

ベトナムのグエン・タン・ロン保健相によれば、同国各地で最近感染が確認された患者のウイルスの遺伝情報を調べていた専門家が、新たな変異株を発見したという。この新しい変異株は非常に伝播力が強いとみられ、従来型よりも容易に感染が広がる可能性があるとロンは述べた。

グエンは29日、「ベトナムは新型コロナウイルスの新しい変異株を発見した。この変異株はインドとイギリスでそれぞれ最初に確認された既存の2つの変異株の性質を合わせ持っている」と語ったとロイター通信は伝えている。

またロイターによれば、グエンは政府内の会合で「新しい変異株は、イギリス型がもともと持っていた変異がインド型に加わったもので、とても危険だ」と述べたという。

この新しい変異ウイルスは非常に増殖が速いことが実験で明らかになっている。AP通信によれば、ベトナムで最近、新型コロナウイルスの感染が急拡大している原因はここにある可能性があるとロンは述べたという。ベトナムでは58の省と5つの中央直轄市のうち30の省・市で新型コロナウイルスの感染者が確認されている。

WHOによる評価はこれから

新型コロナウイルスが小さな変異を起こすのは珍しいことではない。世界保健機構(WHO)は「国際的に懸念すべき」として4つの変異ウイルスを指定している。このうち、イギリスで最初に確認された変異ウイルスが「B117」で、インドで最初に確認されたのが「B16172」だ。残り2つはそれぞれ、南アフリカとブラジルで最初に感染が確認されたものだ。

イギリス型もインド型も、他の株に比べて伝播力が最大で50%も高いことが研究で明らかになっている。

WHOの感染症対策専門家、マリア・ファンケルクホーフェは29日、本誌に対し、新たにベトナムで確認された変異ウイルスに関する評価はまだ定まっていないと語った。

「ウイルスが広がり、進化を続ける中で、そして世界的に遺伝情報の解析能力が拡大していく中で、今後さらに多くの変異ウイルスが確認されていくだろうと考えている」と、ファンケルクホーフェは述べた。

ファンケルクホーフェは、変異ウイルスが確認された場合はまず第一にWHOによって適切に評価される必要があると述べた。

「WHOのベトナムオフィスはベトナム保健省と協力しており、近いうちにさらなる情報が届くと思う。これまで分かっている範囲では、ベトナムで見つかったのはB16172変異株で、他にも変異を伴っていると思われるが、続報は届き次第公開する」とファンケルクホーフェは述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中