最新記事

中国

米中貿易額の激増:垣間見えるバイデン政権の本性

2021年5月23日(日)12時32分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

これは何を意味しているのだろうか?

アメリカの貿易高が急増した理由

アメリカの対中貿易高だけが突出して大きくなっている理由として、一つには2020年1月15日に発表された米中貿易に関する「第一段階合意」(合意)があることは考えられる。

しかし「合意」は主としてアメリカが中国に対して「米国産の○○を購入しろ」ということを要求するものであって、決して「アメリカが中国産の●●を購入します」ということを中国に対して誓う性格のものではない。

だというのに、図1から明らかなように、中国側から見た対米輸出は、輸入よりも遥かに大きくなっている。しがたって、アメリカが突出している理由に「合意」があるとは考えにくい。アメリカは中国からの物資をより多く受け入れ、購入しているということになる。

中国にとってはなんと「喜ばしいこと」であろうか。

この増加ぶりの要因の一つに、バイデン政権に入ってからワクチン接種が進み、アメリカ経済が回復し始めたことも考えられるが、しかしそれにしてもトランプ政権であった2020年と、バイデン政権に入った2021年で、「増加率が61.8%も跳ね上がった」ことは、ワクチンが効いてきたからということだけでは説明しにくい。

もし、バイデン政権が本気で対中強硬を実施しようと思うのなら、輸入にストップを掛けることだってできたはずだ。しかし、そのようなことをした形跡は全くない。

現実は、勇ましい言葉とは裏腹なのである。行動を伴っていない。

インド太平洋QUAD(日米豪印)枠組みはどこに行ったのか?

モリソン首相になり、コロナ発祥の原因調査を独自で行うなどの言動により、中国とは縁を切ったような仲になってしまったと思われるオーストラリアだが、貿易額は32%も増加している。平均増加率よりは小さいので、まあ、それほど大きな貢献をしているとは思えないものの、なかなかに無視できない。

中国とは国境紛争をしているので、アメリカ寄りと思われるインドも、絶対額はそもそも小さいものの、増加率となると63.30%と、どの国よりもダントツに大きい。

アメリカと連携しながら民主主義価値観を標榜する「西側諸国」の代表であるようなイギリスやカナダも、その絶対額はEU諸国の中の一つ同様に大きくはないものの、増加率ときたら、アメリカに劣らず大きい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

イスラエルがシリア攻撃、少数派保護理由に 首都近郊

ワールド

学生が米テキサス大学と州知事を提訴、ガザ抗議デモ巡

ワールド

豪住宅価格、4月は過去最高 関税リスクで販売は減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    フラワームーン、みずがめ座η流星群、数々の惑星...2…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中