最新記事

東日本大震災10年

3.11被災地を取材し続けてきた櫻井翔が語る「記憶」とずるさ、喜び

SHO ON SHO

2021年3月9日(火)07時00分
小暮聡子(本誌記者)
櫻井翔

3月9日(火)発売の本誌3月16日号 NEWSWEEK JAPAN

<報道番組『news zero』キャスターとして、東日本大震災から10年、被災地の取材を続けてきた櫻井翔。本誌3月16日号「3.11の記憶」特集で初めて1万字の長編ドキュメントを自らつづった櫻井に、何を聞き伝えていきたいのかを聞いた>

櫻井翔はなぜ、毎年被災地を訪れ人々の声を聞き、伝え続けるのか。キャスターとしての自身の役割をどう捉えてきたのか。本誌・小暮聡子が話を聞いた。

◇ ◇ ◇

――報道者の中でも、毎年欠かさず現地を訪れ定点観測している人は多くない。『news zero』のキャスターを15年続けてきたなかで、被災地の取材は櫻井さんにとってどのような意味合いを持つのか。

震災以前から僕が今に至るまで取材し続けていることに「戦争の記憶」がある。ずっと、『zero』を通して戦争の記憶を若い人たちに伝えていきたいと思ってきた。キャスターを始めて5年たったときに震災が起きて、これは継続して取材していかなければいけないなと思った。

戦争と震災の記憶は、自分にとって2つの大きなテーマだ。この2つは、伝えるという立場においては、風化させない、忘れないというところが共通すると思っている。

――放送を見ていると、取材をされる側は、櫻井さんだから、櫻井さんが聞いているから心の中を話している、というのがよく分かる。

そういったことで言うと、ある意味僕はずるいんですよ。「嵐・櫻井翔」という人格も半分持ちながら取材するので、心のどこかで、そのことで小さい子供たちが喜んでくれたらいいな、とすら思っているときがある。話を引き出すというよりは、テレビでよく見る人に自分の思いを知ってもらいたい、と思わせるような「装置」を無意識のうちに使っている。

「取材」で被災地に行ったときに、小さい子供たちが「あー! 櫻井君だー!」って言ってほんの少しでも笑顔になってもらえる瞬間というのは確かにあって。そこが、自分にとっても「下駄(げた)」であり、取材という行為と別のことを同時にやろうとしてしまっているというときが、たぶんあるのだと思う。

――画面を通して「伝える」という仕事をどう捉えているか。

報道番組に携わってすぐの頃、アナウンサーの福澤朗さんが言ってくださったのは、キャスターというのは、椅子に付いているキャスターの名のとおりAのことをBのところに運ぶ役割でもある、と。

なので僕は、『zero』月曜キャスターという立場、およびシチュエーションによってはジャニーズ事務所「嵐・櫻井翔」という立場を使って、テレビというメディアを通して、被災地の人たちの思いだったり、時に実態だったり、苦悩だったりが伝わればそれでいいと思っている。自分の主義主張を強く、こうあるべきと言うことの役割よりも、取材相手の思いをより多くの人に拡声器となって伝えていく役割。究極的に言うとそれでしかないと思っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

シカゴ連銀公表の米失業率、10月概算値は4.4% 

ワールド

米民主党ペロシ議員が政界引退へ 女性初の米下院議長

ビジネス

英中銀が金利据え置き、5対4の僅差 12月利下げの

ビジネス

ユーロ圏小売売上高、9月は前月比0.1%減 予想外
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 8
    ファン熱狂も「マジで削除して」と娘は赤面...マライ…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    コメ価格5キロ4000円時代を容認? 鈴木農相の「減反…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中