最新記事

感染症対策

新型コロナウイルスワクチン、各国の入手時期と接種の進め方

2020年11月29日(日)12時02分

他の国での開始

EU、英国、日本、カナダ、オーストラリアは、いずれもワクチンの規制手続きを急ピッチで進めている。

アストラゼネカの年内の生産分は、多くが英国向けとなる見通し。英保健当局者によると、承認されれば12月にも接種が始まる可能性がある。介護施設の居住者や、そこで働く人たちが最優先される。

欧州では、EU医薬品規制当局が12月にワクチンの安全性を判断する可能性があると表明している。

EU加盟国の大半は、最初の対象者が高齢者や体の弱い人、医者のような前線の労働者になるとしている。

加盟国によると、ワクチン購入は欧州委員会がワクチン6種類、約20億回分を契約した共同調達計画を通じて行う。

配布の日程のめどは、国によって違う。大半の国は、まだ配布と接種の計画を策定中だ。

イタリアは、来年初め頃にはファイザー・ビオンテック連合とアストラゼネカのそれぞれからワクチンを受け取っている見込み。スペインは1月の計画だ。

ブルガリアの保健責任者は、最初の入荷が来年3─4月になると想定している。ハンガリー外相は、早ければ来年春に入手すると述べた。

ビオンテックの本国であるドイツは、来年初め頃に本格的な接種を見込んでいる。展示会ホールや空港ターミナル、コンサート会場を大規模接種拠点とする想定だ。介護施設向けには移動接種チームも用いる。前線で働く医療従事者や、新型コロナの重症化リスクのある人たちが、最初に接種を受ける見込み。

発展途上国への配布

世界保健機関(WHO)と発展途上国へのワクチン普及を進める国際組織「Gaviワクチンアライアンス」が主導し、中高所得国や非政府組織(NGO)が資金を拠出する新型コロナワクチン共同購入の枠組み「COVAX」は、これまでに20億ドルを集めた。

CAVAXの当初目標は、貧困状態にある発展途上国の国民の3%への接種で、最終的に20%の接種率を目指す。CAVAXはアストラゼネカのワクチン購入で暫定合意している。アストラゼネカのワクチンはファイザーなどと違い、超低温での保管が必要ない。

アフリカのより低所得の国やインドなどの東南アジア諸国は、COVAXの計画を通じて、来年に低価格ないし無料でワクチンを得られることを期待しているが、まだ確実ではない。

中南米などの国も、COVAX経由でワクチンを購入するかもしれない。医薬品メーカーと供給契約を結んだ国もある。

ワクチン費用

ワクチンメーカーと各国政府はさまざまな価格交渉をしており、す全てが公表されているわけではない。

アストラゼネカのワクチン1回分で数ドル相当というケースから、2回接種するファイザーの1コース分で最大50ドルというケースもある。多くの政府は、国内居住者への接種費用は支払うことを表明している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナが改めて浮き彫りにした「毛皮工場」の存在
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力



ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、第3政党始動計画にブレーキ=WSJ

ワールド

米大豆農家、中国との購入契約要請 トランプ氏に書簡

ワールド

韓国は「二重人格」と北朝鮮の金与正氏、米韓軍事演習

ワールド

トランプ政権、ワシントン検事局に逮捕者のより積極的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中