最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選挙、再集計で結果が変わることはあるか?

2020年11月12日(木)21時17分

Q:トランプ氏は再集計させることが可能か?

すべての州は、再集計を行う基準を各々で定めている。極めて接戦になった時には再集計を義務化している州もある。バイデン氏勝利の鍵を握った州の1つ、ペンシルベニア州では勝利候補と次点候補の得票差が0.5%未満だった場合、再集計が義務付けられている。10日の米東部時間正午(1700GMT)時点で開票済みの約680万票において、バイデン氏はトランプ氏に約0.67%の差をつけている。また、各選挙区の有権者が個別に、郡に対して再集計を請願することも可能で、これについては再集計をする基準が法律では定められていない。

ジョージア州やウィスコンシン州などの州では、一定の基準があって、それを超えると自動的に再集計の義務が生じるというわけではないが、負けている候補が特定の条件下で再集計を強いることはできる。ジョージア州の条件は得票差が0.5%未満、ウィスコンシン州は1%未満の場合だ。10日の米東部時間正午、バイデン氏は両州でトランプ氏をリードしているが、票差は非常に小さく、情勢によってはトランプ氏陣営が再集計を求めることは可能になる。

通常、候補者は州が最終の集計結果を認証してからこうした要請を行う。

Q:結果は変わるのか?

再集計によって選挙結果が覆るのはまれだ。これまでに覆ったのは、上位2候補の票差がわずか数百票のケースだった。

超党派グループ「フェア・ボート」が昨年行った研究によると、2000年から19年にかけて各州が実施した州全体規模での何らかの再集計は31件で、結果が覆ったのはうち3件にとどまった。うち2件は、04年のワシントン州の州知事選と、06年のバーモント州の州監査役選だった。

08年にはミネソタ州の米連邦議会上院選で再集計が行われ、結果が覆った。ただ、法的手続きに時間がかかったため、その上院議員ポストは6カ月間空白が続いた。

再集計ではむしろ、当初の勝者がわずかに票数を伸ばすことの方が多い。フェア・ボートによると、再集計による変化は平均0.0024%。トランプ氏が僅差で負けている激戦州で、バイデン氏の勝利を覆すのに必要な変化よりずっと小さい。

トランプ氏陣営が現在、再集計を求めるとしているウィスコンシン州では、16年の大統領選で再集計が行われた。得票率約1%の緑の党の候補が再集計を求めたためで、結果としてトランプ氏の得票がさらに131票増えた。

ウィスコンシン州では現在、バイデン氏がトランプ氏に2万票以上の差をつけてリードしている。同州のスコット・ウォーカー前知事(共和党)は先週、トランプ氏が結果を覆すのは「非常にハードルが高い」と釘を刺した。

大統領選の再集計で最も有名なのは、00年のフロリダ州の事例だ。ジョージ・W・ブッシュ(子)元大統領がアル・ゴア候補に1784票差で勝っており、再集計次第でどちらが大統領になるかが決まることになった。再集計と、連邦最高裁まで持ち込まれた法廷闘争の末、フロリダ州はブッシュ氏が537票差で勝利したと宣言した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・人民日報、「大差で勝った」と言い張るトランプを笑う
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力


ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、韓国国会議長と握手 中国の抗日戦勝記念式

ワールド

イスラエル軍、ガザ市で作戦継続 人口密集地に兵力投

ビジネス

トルコ8月CPI、前年比+32.95%に鈍化 予想

ワールド

OPECプラス、7日の会合で追加増産を検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中