最新記事

米大統領選

トランプの岩盤支持層「白人キリスト教福音派」もトランプ離れ

RNC Speakers Reach for God; Trump's Support Slips among White Evangelicals

2020年8月26日(水)19時00分
ラムジー・タッチベリー

共和党大会初日の演説では宗教的レトリックが目立った(写真はトランプの長男、トランプjr.) Kevin Lamarque-REUTERS

<トランプ再選に必須の白人キリスト教徒福音派の支持率が、新型コロナウイルス感染症拡大のころから下がり始めた。大統領選への影響は?>

米大統領選に向けた共和党の全国大会が8月24日に開幕したが、初日の柱は宗教だった。トランプ支持者は「宗教を破壊しようとする民主党」と戦う「宗教の自由の擁護者」として、トランプと共和党を褒め称えた。

宗教は、共和党やドナルド・トランプにとって新しいテーマではないが、トランプの再選運動は重要な節目を迎えている。このところ支持基盤の中核を占める白人のキリスト教福音派の支持率が低下しており、トランプ再選の可能性に赤信号が灯っているのだ。

福音派は聖書を文字通りに理解し、信仰する保守的なプロテスタントの総称で、アメリカ国民のおよそ30%前後を占め、最大の宗教勢力と言われている。なかでも白人の福音派は、2016年大統領選におけるトランプの勝利に大きく貢献した。

開会の祈りを捧げたニューヨークの大司教、ティモシー・ドーラン枢機卿はもちろん、次々に演壇に立ったトランプ支持者たちが口にした宗教的な表現は、アメリカ政治に浸透している典型的な「ゴッド・ブレス・アメリカ」といった表現よりもさらに宗教色の強いものだった。

トランプの息子も先頭に立って民主党を攻撃し、それを「信仰と無法の戦い」と呼んだ。

「信仰心の厚い人々は攻撃されている」と、トランプの長男で選挙運動幹部のドナルド・トランプ・ジュニアは語った。「教会に行くのは許されないが、道がデモで大混乱になるのは許される。この選挙は『教会、仕事、学校』と『暴動、略奪、破壊行為』の対立だ」

「神様、トランプにあと4年を」

共和党大会初日の夜に登壇した人々は、宗教はトランプと共和党にとって最優先事項であることをオンラインの視聴者に印象付け、2016年にトランプの勝利を助けた白人福音派に直接訴えかけた。トランプは、神と信仰にめざめた一部の支持者から熱烈な支持を受けた。

議会におけるトランプの擁護者の一人であるジム・ジョーダン下院議員(共和党・オハイオ州選出)は、「民主党は人々を教会に行かせようとせず、デモに送り出そうとする」と語った。

「私は毎晩『神様、彼にもう少し時間を与えてください』と祈る」と、元NFL選手のハーシェル・ウォーカーは演説した。「トランプにあと4年、与えてください」

2016年の大統領選でトランプは白人福音派の票の81% を獲得した。ここ数カの世論調査でも依然、白人福音派の過半数の支持は維持しているものの、数字は落ちている。

4~6月の調査では支持率は6ポイント下落し、白人福音派の支持率は72%となった。別の調査によると、3月のトランプの大統領としての支持率は全体で77%だったが、それが5月末には62%と15%ポイント下落した。同じ世論調査で、白人カトリック教徒の支持率は3月には60%だったが、5月下旬には37%と23ポイント低下した。前回の選挙ではトランプは白人カトリックの票の60%を獲得した。

<参考記事>トランプ、支持基盤のキリスト教福音派雑誌が批判「過激なまで不道徳、強欲、汚職、人種攻撃......」
<参考記事>トランプはもう負けている?共和党大会

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、AUKUSの意義強調へ トランプ米大統領と

ワールド

イラン、イスラエル北部にミサイル攻撃 「新たな手法

ビジネス

中国粗鋼生産、5月は前年比-6.9% 政府が減産推

ワールド

中国の太陽光企業トップ、過剰生産能力解消呼びかけ 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中